「『資格をとったら稼げる』という発想は捨てるべき」…税理士でさえ〈年収1,000万円超の人〉と〈年収300万円ちょいの人〉がいるという現実
就職や転職を見据えて「食いっぱぐれない資格」「稼げる資格」などを探している方もいるでしょう。しかし、進路指導のプロである小林尚氏は「『資格をとったら稼げる』という発想は捨てるべき」と忠言します。山内太地氏・小林尚氏の共著『やりたいことがわからない高校生のための 最高の職業と進路が見つかるガイドブック』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
Q.「資格・免許をもっていれば稼げる」ってホントなの?
高校生から「資格や免許をもっていれば稼げますか」と聞かれることがあります。本稿のテーマと同じ質問ですが、その生徒も「資格があれば稼げる」と信じているわけではないと思います。世の中そんなに甘くはないと理解しているはずです。 わかっているのになぜそのような質問をしてくるかと言うと、「資格をもっていればなんとかなるかも…」という、一縷(いちる)の望みをかけて聞いてくるのだと思います。 では、実際どうなのか、これからお話しします。 ⇒回答(1):資格や免許によって稼ぎは変わる 医師は稼ぎがよいイメージがあると思います。医師は医学部を卒業して医師免許を取得している方です。国家資格ですね。実際、平均年収は1,000万円を超えていますから、稼げる仕事の一つと言えます(のちほどのコラムでもくわしくお話ししますね) 同じく国家資格・免許が必要な職業の例を挙げると、タクシードライバーも免許が必要です。一般的に私たちが車を運転するときは普通自動車第一種運転免許が必要なのですが、タクシードライバーになるには第二種免許の取得が必要です。お客さんを乗せて営利目的で運転をしますので、そのための講習や試験を受ける必要があります。 そのタクシードライバーの平均年収は、約300万円と言われています。医師と比べてざっと3分の1程度です。 これだけ差が出るのにはさまざまな理由があって、その職業や業界の稼げる度合いのほかに、その資格をとるための大変さ、難易度が関係しています。タクシードライバーの資格をとるための労力と医師免許を取得する労力を比較するとかなり差があります。 やはり、医師免許を取得するほうが大変で、その分、稼ぎもよいというのは致し方のないことでしょう。 ⇒回答(2):同じ資格・免許でも「稼げる人」と「稼げない人」がいる 医師とタクシードライバーという異なる職業を比較しましたが、同じ資格・免許をもっていても稼げる金額には違いが生じます。 少し前に、稼げない弁護士が増えているとニュースで報じられたことがありました。これはある程度事実だろうと思います。弁護士の数が増えすぎたことが理由の一つなのですが、受難の時代と言えるかもしれません。 弁護士以外では、税理士にもすごく差が出ていると感じています。税理士も国家資格で、会社の税金などを計算したりアドバイスしたりする職業です。私の知り合いに税理士が何人もいるのですが、かなり格差が激しいようです。 稼いでいる例をお話しすると、自分で税理士法人をつくってたくさんの顧客を抱え、税理士も雇って手広く稼いでいる友人がいます。税理士の仕事をするといろいろな会社とつき合いができて、そこから業界の実情などがわかってきます。それをいかしてコンサルティングを行う会社を新しく立ち上げてダブルで稼いでいます。医師なんか目じゃないほど稼いでいます。 一方で稼げない例もあって、先ほどのタクシードライバーより少しだけよい程度の稼ぎの人もいます。理由はいろいろありますが、稼げる人と稼げない人に分かれている現実があります。 ⇒回答(3):社会のニーズも稼ぎに影響する 同じ資格の職業で稼げる金額に差がつく度合いは、職業によって異なります。弁護士や税理士の人たちの中で差が出る例を話しましたが、医師の場合はそこまで差がつくことはありませんし、そもそもの金額も高いです。 この違いは、その職業の人が足りているのか、不足しているのかという問題もかかわっています。弁護士の場合、人余りの状態になっていて、弁護士の数ほど仕事がないということも考えられます。 資格をとって稼ぎたいと考えている人は、今後、ニーズがどれだけ見込めるのかを見きわめる必要があるでしょう。
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