農産物輸出大国タイで見た日本のコメ輸出の現実 日本産は高くても売れるのか?「日本食ブーム」に乗るために必要なこと
日本に何ができるのか
タイでの日本食ブームは今後もさらに続くと予想される。日本米がタイという農業国で栽培される動きも止められないだろう。 関税や輸送コスト、輸送時間など日本からの農産物輸出は現地産の農産物に比べ不利な点も多い。タイ産日本米は低価格を武器に日本からの輸出米の強敵にすでになり、今後の技術発展や経営改革によっては歯が立たなくなることもあり得る。だとすれば、タイの米市場に広がっているタイ産日本米に対抗した輸出戦略がないと今後のさらなる日本産米の輸出拡大は難しくなるのではないだろうか? 必要なのは、低価格化とともに付加価値を付けることである。タイでも有機農業が安全安心と言われているし、脱炭素など環境に負荷のかからない農業が求められている。このことをできる限り数値化して、タイ産日本米に比べ高価格である理由を示すのは一案だろう。また、すでに日本政府が進めているように、スマート農業など革新技術の支援を通じて、現地の生産に寄与することで日本が得られるものもあるのではないだろうか。 農業生産国に日本の農産物を輸出するのであれば、それなりの覚悟が必要で、それを前提としての戦略が求められる。 『Wedge』2023年1月号の特集「農業にもっと多様性を! 価値を生み出す先駆者たち」に、スマート農業に関する記事を加えた特別版を、電子書籍「Wedge Online Premium」として、アマゾンや楽天ブックス、hontoなどでご購読いただくことができます。
福田浩一