「HPVワクチン」を接種する男性が増えているワケ。“子宮頸がん予防”だけではないメリットと副作用を医師が解説
子宮頸がんワクチンと聞き、男性には関係ないと思うのは早計だ。今年は男性への接種が本格化する“元年”になりそうだ。いったい、誰が何のために打つのか!? ⇒【写真】大学生の息子にワクチンを接種させたという40代男性も
東京でも全額助成が開始!45歳までの男性に効果アリ
男性には無関係だと思われた子宮頸がんワクチン(以下、HPVワクチン)をめぐって新たな動きが出始めた。最近になり男性に対するHPVワクチンの公費助成が全国の自治体で相次いで始まったのだ。 東京23区では、今年度から多くの自治体が全額助成を決めており、男性の接種が今後、一気に広まる可能性がある。他の先進国に比べると我が国の男性接種率は著しく低いが、状況は確実に変わりつつある。 数年前から実業家の堀江貴文氏や男優のしみけん氏など有名人が接種したと報告するケースが増えているが、現在では一般人も「打った」とSNSで報告するケースが見られるようになった。 日本では毎年1万人以上女性が罹患する子宮頸がん。厚生労働省によると年間約3000人が亡くなっており、近年では性行為の低年齢化などにより20~30代の若い世代の発症も増えている。 子宮頸がんを発症させるのはヒトパピローマウイルス(HPV)の中でもハイリスクな数種類のHPVだ。同ウイルスの感染を防ぐことでがんを予防できるのが、HPVワクチンだ。 実際に9価ワクチン(9種類のHPV感染を防ぐワクチン)の接種により、感染が80~90%防げるとされている。 しかし、日本では’13年4月にHPVワクチンが定期接種となった直後、「足が動かず歩けない」「体の一部が勝手にビクンと動いてしまう」などの症状を訴えるケースが出現。 結果、同年6月に厚生労働省はワクチンの積極的勧奨を中止。日本の接種率は1%を切ることもあるほど低下した。
接種すれば男性本人にも絶大なメリットが
’22年にワクチン接種の積極的な勧奨が再開されたが、それでも接種率は先進国のなかでも非常に低い水準だ。では、なぜ男性がHPVワクチンを打つのか。産婦人科医の重見大介氏は説明する。 「HPVはいろんな病気に関わっており、感染を防ぐことで子宮頸がん以外の病気、例えば陰茎がんや肛門がん、中咽頭がんのほか、性感染症の尖圭コンジローマといった病気を予防できます。男性が接種することにより、性交渉によるHPV感染から女性を守り、子宮頸がんの予防にもつながります」 男性自身のためだけでなく、パートナーや配偶者の性感染症・子宮頸がんリスクを抑えるため、有効というわけだ。 大学生の息子にワクチンを接種させたという父・Fさん(40代)は次のように話す。 「子供を残し、若くして子宮頸がんで亡くなった親戚がいました。本人も残された家族もとても悲しい状況で……。私の自治体には助成がなく、5万4000円かかりましたが、がんに罹患するリスクが減少するならと昨年、接種させました。接種した日、息子は微熱が出て少し寝込んだものの、翌日からは普段通りの生活ができていました」 HPVワクチンは性交を経験する前の年齢に打つことで最も効果的とされており、男性の子を持つ親への啓蒙も進んでいる。 世界保健機関によれば、男性のHPVワクチン接種は、9~26歳が最も効果が高く、45歳まで一定の効果があるとされている。33歳になる会社員のKさんは「婚活」のために約10万円かけて接種した。 「婚活の際に評価してくれる女性がいる可能性を信じて接種しました。副反応も特になかったですね。今のところ、接種したことにメリットを感じて、私と結婚したいと思う女性とはまだ出会えていないですが……。男性の接種者が評価される世の中になってほしいですね」