義母の介護を1人でしていますが、先日「遺産はあなたが受け取って」と言われました。“夫の母の財産”でも相続は可能ですか? 夫もその兄妹も介護はしていません…
「親の介護は実子がおこなうもの」という考え方が現代ではかなり普及してきていますが、家庭によっては配偶者がその役割を担うこともあるでしょう。夫の母親の介護を実子である夫もその兄弟姉妹も関与せず、妻が1人で行っていた場合、妻の苦労は想像に余りあります。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる? しかし、そんな妻の献身的な介護に感謝をしている義母が「遺産をあなたにあげたい」と申し出たら、妻は「介護をしてきた苦労が報われる」と思うこともあるのではないでしょうか。 このように妻の献身的な介護や義母の希望があれば、妻は義母の法定相続人でなくても遺産を受けることができるのでしょうか。本記事では、介護者が受け取ることができる相続について解説していきます。
基本的な相続の範囲
相続の基本から確認していきます。相続には「法定相続人」が民法によって定められています。 まずは「配偶者」です。亡くなった人が婚姻関係にある場合、配偶者は常に相続人となります。続いて相続人となるのは「亡くなった人の子ども」です。夫婦に子どもがいない場合は、直系尊属である親、親がいない場合は、亡くなった人の兄弟姉妹に相続権が移っていきます。 配偶者以外は直系の親族で相続をすることになるので、今回のように、「亡くなった人の子どもの妻」は相続人になることはできないのです。
介護した人に権利がある「特別寄与分」
法定相続人でなければ一切の相続ができないのではないかというと、そうではなく、「介護」の主たる担い手であった「子の妻」も相続を受け取ることができる場合があります。それは「特別寄与」という民法の規定によるものです。 「特別寄与」とは、相続人以外の親族のうち、故人に対して「療養看護その他の労務を提供」した人が、その貢献度に応じて相続の一部を請求できる権利です。ただし、この介護が無償あるいは対価に見合っていない報酬であったことと、介護によって故人の財産が維持または増加していることがポイントとなります。 例えば、子の妻の介護によって義母が介護施設に入らず、その施設費用がかからなかった場合があてはまります。このように「介護によって故人の財産を守った」という貢献性に報いるための制度となっているのです。 特別寄与分の請求は、その貢献度に応じて寄与者(介護者)が相続人に請求することができます。この額は相続人と寄与者との協議によって決まりますが、話し合いが決裂した場合は家庭裁判所で調停や審判を行うことになります。 また、この寄与分の請求は相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過してしまうと、申し立てができなくなるので注意が必要です。請求をスムーズに行うためにも、介護をした日数や内容のメモ、要介護認定通知書や診断書などの客観的な資料などを準備しておくといいでしょう。