『虎に翼』羽瀬川なぎが体現する“空白の14年間” 涼子の元付き人・玉役で“翼”を得るか
“これまで”を感じさせる羽瀬川なぎの表情とセリフ
そんな羽瀬川が朝ドラに登場するのはこれが2度目だ。前回は、3世代のヒロインが物語のバトンをつないでいく『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)の「ひなた編」に少しだけ登場。時代劇マニアのヒロイン・ひなた(川栄李奈)が参加した「ミス条映コンテスト」で優勝したのが、羽瀬川が演じる高山理恵だった。印象的な役どころではあったが出番がかぎられていたため、すっかり忘れてしまっていた方も多いと思う。 気鋭の若手俳優に位置付けられる羽瀬川は、2024年は『厨房のありす』(日本テレビ系)にも出演し、『真犯人フラグ』(2022年/日本テレビ系)や『未来への10カウント』(テレビ朝日系)、『リバーサルオーケストラ』(2023年/日本テレビ系)といった話題作にこれまで参加してきた。とはいえいずれもピンポイントの出演で、彼女が表現できることはかぎられてもいたものだ。 『虎に翼』でも同じようなポジションかと思っていたが、どうやらまったく違うようである。 「新潟編」から玉が再登場して間もないため、ここでも羽瀬川が十分に自身のポテンシャルを発揮できているのかは分からない。しかし、彼女が浮かべる表情と発するセリフには、寅子の知らない涼子との“これまで”が感じられたものだ。ドラマで描かれていない空白の14年を想像し、思わず涙ぐんでしまったのは私だけではないだろう。 私たちは羽瀬川なぎという俳優の本当の力量をまだ知らない。けれどもこれからの展開しだいでは、知っていくことができるのではないかと思う。彼女もまた、本作で“翼”を得ることになるのではないだろうか。玉の人生を体現する姿は、そんな予感に満ちている。
折田侑駿