「どうして勉強しなきゃいけないの?」~2人の“女王”とお受験にみる「学ぶ理由」【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■日本人も読めない!?“遊女大安売り”のチラシ
みなさんはこの画面に映されている縦書きの文字、なんと書いてあるか読めるだろうか? 「おそれながら、口上書(こうじょうがき)をもって申し上げたてまつりそうろう」と読むらしい。 英語では「I humbly present you with this written statement.」。ケンブリッジ大学でおこなわれたサマースクールでは、世界各国から生徒が集まって、日本のくずし字を学んでいる。
こちらは吉原の「大和屋」という置屋が配った「現金『遊女大安売り』引手なし(置屋への支払いなし)」というチラシとして配られた「ひきふだ(引札)」がすべて候文(そうろうぶん)で書かれている。越後屋(今の三越)が出したチラシに似せてつくったものらしく、これを全員でひもとき、声に出して読む。 「御懇意様方江も御風聴 ごこんいさまがたへもごふうちょう 被成下候様、 なしくだされそうろうよう、 (友達にもお聞かせくださいますよう) 偏二奉願上候以上 ひとえにねがいあげたてまつりそうろう いじょう (ひたすらにお願い申し上げます 以上)」 といった具合である。 度肝を抜かれた。指導するラウラ・モレッティ教授は一字一字解説しながら、当時の社会状況や風俗を交えながら身ぶり手ぶりをまじえて情熱的に教える。生徒は日本の近世文学の研究者から、大名庭園の研究をしている学生、タイの大学で日本語を教えている先生など、年齢も国籍もさまざまな総勢34人。一生懸命、くずし字や候文と格闘している姿に圧倒される。オランダから来た学生は、もともと将棋が好きで日本に興味を持ち、ラテン語とギリシャ語を学ぶかたわら、村上春樹から谷崎潤一郎や三島由紀夫、夏目漱石も原語で読むようになったと話した。聞けばこの12日間に及ぶサマースクール、2014年から11年間にわたって続いているのだという。毎回60人の応募があり、指導しやすい30数人にまで絞っているとのこと。