阪神梅野が2年ぶり一発に盗塁阻止率首位。守りだけの正捕手はありえるのか
眠れる捕手の2年ぶりの一発だった。 阪神の梅野隆太郎(25)が4日、神宮球場で行われたヤクルト戦で、2015年8月25日の広島戦で大瀬良から打って以来、2年ぶりとなる本塁打を放った。4回二死からヤクルトの石川のストレートをジャストミート。 「芯には当たったんですが、こすったし上がりすぎたかなと思った。入るかどうかわかんなかった」 梅野は、打った瞬間、あきらめるような仕草をした。打球は、高く打ち上げ過ぎたのだが、うまく風に乗ってレフトスタンドのフェンスを越えて、その最前列まで運ばれた。 「風が押してくれました。 久々だったんで、気持ちよかったですね」 5回にもライト前へタイムリー。5点のビッグイニング演出に梅野も加わった。 猛打賞をマークしたが、 打率はまだ1割台。WBC後遺症に悩む巨人の小林誠司と、規定打席に達した選手の中での不名誉な最下位争いをしている。 「うまくいかないことがほとんどで苦しんでいました。やっと出てほっとしています」 2日は、パスボールに打撃妨害。肝心の守りでミスを犯して3日のゲームは今季初めてスタメンを岡崎太一(33)に譲った。内心忸怩たる思いがあったことは想像できる。 「(打撃と守備の)メリハリ、切り替えが大事だと思っています」 盗塁阻止率は、セ・リーグ、ナンバーワンを誇る。初回二死から山田哲人に初球に走られた。だが、4回には一死一塁から、雄平がフルカウントでスタートをきると、ショートバウンドになる落ちるボールだったにもかかわらず、“逆シングル”でミットに納めて、武内を三振、雄平も二塁でアウトにした。三振ゲッツーで5回のビッグイニングへとつながる守りのリズムを作った。 盗塁阻止率の高さについて「捕手をしている以上は、いつも投手を助けたいと思っています。いつでもまずしっかりと準備。それが結果つながっていると思うんです」と言う。 とにかく捕ってからが早く、テイクバックがコンパクトでコントロールが乱れることがほとんどない。 元千葉ロッテで捕手としてゴールデングラブ賞を2度受賞している里崎智也氏は、「盗塁阻止は、投手と捕手の共同作業です。牽制やクイックを含めた投手の仕事に加え、梅野が捕球からスローイングに移る動作も含めて、すべて1.95秒以内に、しっかりとまとめているからでしょう。状況を頭に入れて準備をしておき、ランナーが到達する秒数を下回って正確にスローイングすればアウトにできるのです」と、投手の警戒やクイックなどの作業を含めて、阪神バッテリーが鍛えられ、しっかりとした準備に裏付けされていることが、梅野の盗塁阻止率の高さにつながっていると見ている。 どれだけ快足と呼ばれているランナーでも、リードした位置から二塁ベースまで、3.2秒から3.3秒かかる。投手のクイックと、捕手の捕球からスローイングを合わせた秒数と、野手のタッチの時間を合わせた合計が、3.2秒以内であれば、計算上、盗塁を阻止できることになる。 里崎氏の試算によると、クイックが1.25秒以内、捕手の動作が1.95秒以内を守れれば、コントロールの乱れやタッチ時のミスがない限り、走者を刺すことができるという。ちなみに元ヤクルトの古田敦也氏は、捕手の捕球、スローイングのノルマを1.90秒以内と教えていた。 梅野は、その鉄則を維持できているのだ。