選手権で「フィジカル対テクニック」 V候補名門が貫く理念…目立つ高レベルの「駆け引き」
高い守備強度は「想定」…響いた監督の言葉
この3試合は、いずれもそうした静岡学園とポゼッション勝負をするというよりも、フィジカルを生かしたプレーに良さを見せる相手との対戦だった。川口監督は「3試合とも守備の強度が高く、ボールを握られるような試合になる相手ではなかった。(高円宮杯)プレミアリーグや県予選でも、あまりブロックで固めてくるチームがなかった。難しくなるのは想定していたし、点を取れるかどうかの不安はあった」と話す。 それでも「でも、それをこじ開けて。今日も選手たちに『フィジカル対テクニックだ。テクニックが必ず上回るぞ』と送り出した」と、その信念を語った。 チームの中でも今大会で局面の高い技術を見せているDF鵜澤浬は「僕自身がロングボールを蹴るサッカーより、ボールをつないだり自分の力でドリブルで外したりはがしたりするサッカーが楽しいし、好き。高校サッカーで技術を極めたチームが少なくなってきている中で、昔からの伝統というかテクニックで、身体能力でやってくる相手に勝つというのが自分たちの理念でサッカーなので、そこを貫いて勝てているのは日々の練習をしてきたおかげだと思うので嬉しい」と話す。 ドリブルやテクニックでスタンドからの歓声を受ける場面も多いが「キックフェイントではがした時の沸いている声は人生で一度も体験したことがない。プレー中で集中している自分にも声が届くのは、人生の中でもなかなか体験できない貴重な大会だと思うので嬉しい」とも話した。 準々決勝の対戦相手は、プレミアリーグWESTでも対戦する東福岡(福岡)に決まった。再びテクニックとフィジカルのぶつかり合いになる試合展開が予想されるが、静岡学園は変わらぬスタイルで優勝候補対決を突破できるのか。こうした理念や信念のぶつかり合いもまた、サッカーの楽しみ方の1つだ。
轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada