「移籍トラム」の素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
やばいポイント2「実は兄弟」
かつて同じ町で活躍していた兄弟車両が、路線の廃止などにともない、移籍トラムとして全国各地に散らばった例は少なくない。 例えば、福岡市内線(1979年廃止)などで活躍していた西日本鉄道(福岡県)の連節車は、軌道線(路面電車)の縮小や廃止により、 ・広島電鉄/筑豊電鉄(福岡県、西鉄グループ) ・熊本市電(熊本県) の3社局に譲渡された。それぞれ移籍先で整形された上で活躍している。 また、豊橋鉄道には東京都民にもおなじみの「現役の都電」と同じ顔の電車が走っている。これは、都電荒川線(東京都)の更新7000形(現7700形、一部は2010年代に再更新)の一部車両が譲渡されたものだ。元々同じ顔だった兄弟電車が、移籍先で 「どのように整形されたのか」 を見比べるのも面白い。
やばいポイント3「懐かしの出身地カラー」
移籍トラムは、移籍後も「出身地のカラー」をそのまま残して走っているものが多い。その代表例が広島電鉄だ。 広島電鉄は、大阪市電(大阪府、1969年廃止)や神戸市電(兵庫県、1971年廃止)の中古車両を導入する際、塗り替えずに最低限の改造だけで運行したところ、関西の旅行者から「懐かしい」と好評を得た。そのため、後に移籍した京都市電なども、移籍前のカラーを残したままデビューし、広電は 「動く電車博物館」 として知られるようになった。現在では、岡山電気軌道やとさでん交通、熊本市電など、さまざまな社局でも「出身地カラー」を引き継いだ移籍トラムが活躍している。 また、出身地ならではの特徴的な内装が引き継がれている例もある。例えば、神戸市電の車両は曲線を多用した優美なデザインで有名で、広島電鉄に移籍した582号も神戸市電カラーのまま活躍を続けている。実は582号は1924(大正13)年製で、今からちょうど100年前に作られた電車だ。同型車の多くが広電に移籍したが、現在生き残っているのはこの1両だけだ。 100歳の電車とはいえ、582号はイベント用ではなく「一般車両」として運行されているので、もし運よく乗ることができたら、特徴的な手すりやつり革金具に「大正モダンの息吹」と「神戸のこだわり」を感じてほしい。