「認知症」の初期症状はご存じですか? 原因や受診の目安も医師が解説!
認知症の受診の目安は?
編集部: どのような症状がみられたら、受診すればいいのでしょうか? 藤田先生: 例えば、「物忘れがどんどんひどくなる」「迷子になることが増えた」「落ち込んだり、イライラしたりすることが増えた」など、以前と異なる変化がみられる場合には早めに受診することをおすすめします。認知症の症状はゆっくり進行することが多いとはいえ、受診を先延ばしにすると「徘徊して行方不明になってしまった」「交通事故に遭った」などのトラブルになることも考えられます。 編集部: 早く治療を開始した方が、治療効果も高いのですか? 藤田先生: 治療効果も高くなりますし、認知症を引き起こしている病気によっては治療可能なものもあるので、認知症の症状そのものを治せる場合もあります。例えば、甲状腺機能低下症は認知症の症状を引き起こす疾患で、適切に治療することで症状を軽減できます。そのほか、老年期のうつ病やせん妄などの心の病気も認知症と間違われやすいため、それらと鑑別するためにも早めに受診することをおすすめします。 編集部: 何科を受診すればいいのですか? 藤田先生: まずは、かかりつけの医師に相談してみましょう。また、「物忘れ外来」を設置している医療機関もあるので、利用してみるのもおすすめです。あとは、精神科や脳神経内科・脳神経外科を標榜している医療機関でも、認知症の治療がおこなわれています。 編集部: 早めの受診が肝心とはいえ、高齢の家族に受診を促すのが難しい場合もあると思います。 藤田先生: そうですね。認知症の自覚がない人を病院へ連れて行くのは案外難しいものです。その場合、かかりつけ医に相談したり、訪問診療をお願いしたりするといいかもしれません。また、いきなり受診を促すと抵抗されることもあるため、はじめは「健康診断を受診してみたら?」と提案するのもいいと思います。あとは地域包括支援センターや保健所でもそうした相談に乗ってくれるので、訪ねてみてはいかがでしょうか。 編集部: とにかく、まずは早めに受診することが大事ですね。 藤田先生: 特に気をつけたいのは、うつ病と認知症が併発している場合です。老年期になると環境の変化や加齢による体の衰えなどが原因となり、うつ病を発症する人が多いのです。一方、認知症でもうつ症状を示すことがありますから、「うつ病かと思ったら、実は認知症が進んでいた」ということも少なくありません。 編集部: うつと認知症を併発している場合はどうするのですか? 藤田先生: うつ病の治療を適切におこなうことで、症状の軽減が期待できます。まずは医療機関を受診し、必要な検査をおこなって、認知症の有無を調べること、そして症状の原因となっている疾患がわかったら、適切な治療を開始することが大切です。早めに治療を開始すれば症状の進行を緩やかにすることもできますから、困ったことがあれば早めに医師へご相談ください。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 藤田先生: 認知症というとネガティブなイメージがありますが、その一方で「認知症になると死に対する恐怖を忘れられる」「物忘れがあることで毎日新しい体験の連続になり、新鮮な気持ちになれる」というポジティブな考え方もあります。そうしたことを覚えておくと、認知症に対する悪印象が和らぎ、認知症を患った人に接する際も、少し優しい気持ちになれるのではないでしょうか。認知症の人と接するときに大切なのは、相手の尊厳を尊重することです。物忘れを繰り返す人に対し、どうしても怒ってしまう人も多いと思いますが、怒ると余計に症状が悪化します。「患者にどう対応するべきか」ということも、メンタルクリニックなどで医師に相談できますから、ぜひ困ったことがあったら気軽に受診してみてください。