連載 ウクライナのいま 第2回「戦争で変わった旅の姿」
この連載では、NNNのウクライナ取材をコーディネートするキーウ在住のビタリー・ジガルコ氏が、ウクライナのいまを報告する。連載第2回は「旅」をテーマに、戦時下の国内旅行事情について詳しく語る。 (文・ビタリー・ジガルコ/編集・坂井英人)
■戦争で変わったウクライナ人の「旅」
こんにちは! ビタリー・ジガルコです。 子どもたちが楽しみにしていたクリスマスと新年のホリデーシーズンが始まりました。ロシアの侵攻が始まる前は、大勢のウクライナ人が、この年末年始の時期を暖かい国で過ごしていました。ウクライナの厳しい寒さを逃れ、エジプト、アラブ首長国連邦、さらには、インドのゴアや、タイといった国々で、暖かい海と砂浜を楽しんだのです。 しかし今年、ウクライナのクリスマスはエネルギー施設や民間インフラを標的にしたロシア軍の大規模ミサイル攻撃で始まりました。
私たちの敵は、私たちウクライナ人の家からも、心からも、光と温かさを奪い、その魂を破壊するために、あらゆることを行っています。しかし、こうした攻撃は私たちをさらに団結させ、強くするだけなのです。 この戦争は、私たちのお気に入りの旅先である海沿いのリゾートを奪いました。海や自然の美しさから、ウクライナ人から「真珠」と呼ばれるほど人気の観光地だったクリミアを2014年、ロシアは占領しました。そして2022年2月24日以降は、アゾフ海(沿いの地域)をも奪いました。 幸いなことに、ウクライナは黒海沿いの地域の防衛には成功しました。夏には現地で泳ぐことも可能ですが、ロシア軍による頻繁な砲撃というリスクを受け入れないといけません。私たち家族はオデーサ州のザトカという海沿いの村へ行くのが大好きでした。子どもたちは、いまもことあるごとに広々としたビーチや暖かな黒海を懐かしんでいます。
残念ながら、ロシア軍のミサイルは、こうした美しい場所を破壊しました。子どもたちは、いまも夏になると海へ行きたがって、しょうがないのですが、私たち親は常に空襲警報をチェックしたり、ミサイル攻撃を恐れなくてもいいよう、暖かな海に加えて、安全な環境も確保しないといけません。私たちにとって黒海は、もはや安全な旅先ではないのです。