プラごみの海に沈む地球を救う方法...「たった4つの政策」で廃棄は90%減できる
企業に対する訴訟が相次ぐ
信用低下を機にプラスチックのバリューチェーン内の企業に対する訴訟が相次いだ。ニューヨーク州のレティシャ・ジェームズ司法長官は昨年、飲料・食品大手ペプシコを、自社のプラスチック汚染対策について消費者に誤解を与える情報発信を繰り返したとして提訴。 「常に再生材をサーキュラー・エコノミーに組み込み、包装に使う価値ある材料が確実に再生・再利用されるようにする」との同社の説明とは裏腹に、食品包装の多くはリサイクルできず、ペットボトルがリサイクルできる回数にも限度があると主張した。 同州の提訴は今年11月に棄却されたが、今度はカリフォルニア州ロサンゼルス郡が、包装のリサイクル可能性について消費者の誤解を招いたとしてペプシコとコカ・コーラを提訴した(両社は郡の主張を否定している)。 ペプシコは本誌への声明でプラスチック削減と有効なリサイクルに「今後も真剣に取り組む」とコメント。 「主要各社と連携し、賢明な回収策の促進、リサイクルインフラの改善、リサイクルの重要性についての消費者の意識向上、廃棄物削減とプラスチック汚染の革新的解決方法の模索に重点的に取り組むパートナーシップの確立を目指す」という。 9月、カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は、石油大手エクソン・モービル(Exxon Mobil)が熱分解と呼ばれる処理によってプラスチックを分解する「先端リサイクル」を推進しているという「偽りのキャンペーン」を行っているとして同社を提訴。 エクソン・モービル側は本誌への声明で「郡は当社を提訴するのではなく、問題を解決しプラスチック廃棄物を出さないよう当社と協力できたはずだ」と反論した。
再生システムの「再起動」を
これらの訴訟は企業が解決への取り組みを強化するモチベーションになる可能性が高いと、約30年の歴史を持つプラスチックリサイクル業者協会のケイト・ベイリー最高政策責任者(CPO)はみている。 「訴訟は常に懸念材料だが実は世論の圧力にすぎない。一般市民はあらゆる意味でプラスチックに憤り、企業はさまざまな方法で対応している」 この道20年のベイリーはプラスチックのリサイクルが破綻しているとは考えていない。「プラスチックのリサイクルは常に全米各地で機能している。ただ、はるかにうまく機能する必要がある」。プラスチック全体のリサイクル率は低迷中で「再起動が必要」だという。 ベイリーによれば、プラスチックの場合はリサイクルできない物を消費者が回収容器に入れる「ウィッシュサイクリング(Wish-cycling)」もネックになっている。そこで製品設計を工夫する。「消費者に責任を負わせるわけにはいかない。何がリサイクル可能なのかも分かりにくすぎる」 国連の条約はプラスチック製品設計の国際ルールを「調和」させるチャンスだとベイリーは言う。拡大生産者責任(EPR)はペタルーマの試みのようなリサイクル、廃棄された製品の適正な管理・補充プログラムのコストを生産者に移転する一助になるという。 クイン同様、再生プラスチックのコストを新規の製品並みに抑えることも訴えている。 「国際プラスチック条約締結を目指す国連の取り組みは、プラスチックの管理・消費・処理の転換点。数年後にはあれが大きな節目だったと気付くことになると思う」
ジェフ・ヤング(環境・サステナビリティー担当)