西村拓真が海外再挑戦で掴んだ経験。「もう少し賢く自分らしさを出せればよかった」
全体的に速くてでかい選手が多いスイスリーグ
スイスリーグは日本のサッカーファンからするとあまり馴染みがないリーグかもしれない。確かに世界的な名手が集うわけでも、世界に名だたるビッククラブがあるわけでもない。UEFAが発表するリーグランキングだと12位。だが、ステップアップリーグとして数多くの選手が育っているし、バーゼルやヤングボーイズといったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)やUEFAヨーロッパリーグ(EL)で好成績を残しているクラブもある。近年UEFAユーロやFIFAワールドカップでスイス代表が見せている質の高いサッカーからはこの国のポテンシャルの高さを感じさせられる。 セルヴェットFCで主力として活躍している常本佳吾は「ヨーロッパ全体的にもそうですが、スイスリーグも全体的に速くてでかい選手が多い。練習中から切磋琢磨できるのはいい財産だなっていうふうに思います」と語ってくれたことがあったが、若手が屈強な選手がせめぎ合う強度の高いサッカーの経験を積んだり、ユーロ圏外の選手がヨーロッパサッカーに馴染むうえで注目を集めているリーグといえる。 ここ7シーズンで6度リーグ優勝しているヤングボーイズは“再生工場”として知られている。各国で活躍しきれなかった若手選手にセカンド・サードチャンスを与え、再び羽ばたくきっかけの場となりながら、チーム力をキープするために主力の放出はセーブしたりというバランスのいい移籍政策が成功している。ヤングボーイズに倣えではないが、他のクラブでもここでチャンスをつかもうと野心にあふれたタレント性のある若手選手が集ってきている。個性的なアイデアでチャレンジしたり、粗削りながら爆発的なスピードやパワーで躍動する選手がたくさんいて、その中でしのぎを削り合う。それこそバチバチにやりあっても審判の笛はあまり吹かれない。西村にとってそうした環境はまさに願ったりな場所であった。 ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏に分かれ、共用語として英語が用いられる多民族国家として、普段からさまざまなルーツを持った人と接するのが日常なので、外国人選手に対するサポートも丁寧なところが多いのも特徴だ。グラスホッパーでプレーしていた川辺駿(現スタンダード・リエージュ)もそのような理由で馴染みやすさを強調していたが、西村も同様に疎外感を感じることなく飛び込めたと話してくれた。 「このチームは本当にみんなが快く受け入れてくれています。監督(編注:2022年に鹿島アントラーズを指揮したレネ・ヴァイラー)も日本人のことはよく知っているので、全然難しさは感じないです」