西村拓真が海外再挑戦で掴んだ経験。「もう少し賢く自分らしさを出せればよかった」
ヤングボーイズ戦での象徴的なワンシーン
「言われたことを聞くだけではなくて、その中で自分でチャレンジできる瞬間を練習から探していくようにしていた」「相手にとって怖い動きができない選手は交代要員になってしまうから、自分の間合いでチャレンジしていくようにもしていた」。そんな岡崎の談話を伝えると、西村は「間合いとかタイミングか……」とつぶやき、しばらく考えていた。 「ありがとうございます。ちょっと意識してみます。いや、俺も試合前に言われて、迷ってたんです。どこまで聞くか聞かないかのバランスは難しいですよね」 ヤングボーイズ戦で象徴的なシーンが一つあった。左サイドでフリーでボールを受けるとカットインドリブルで仕掛けた場面だ。持ち込んでシュートではなく、切り返してパスを選択し、結果としてチャンスが潰えてしまった。迷いがない時だったら切り込んでそのままシュートに持ち込んでいたのでは?と尋ねると、西村はうなずきながら、「打ってる。迷ってるからそういう判断が遅れているのかもしれないですね、うん」と頭の中を整理していた。 「自分に何ができるか。考えすぎず、チャレンジしまくります」 インタビューの最後にそう力強く語ってくれた。 その後のプレーオフ最終戦とスイスカップ決勝ではベンチスタートで出場時間も短いまま終わった。チャレンジを実践する機会がほとんどなかったのは残念なことだ。ルガノとのスイスカップではPK戦の末に優勝を果たしたセルヴェット。西村もPK戦でゴールを決めた。だが、最終的にセルヴェットとは買取オプションが行使されず、横浜F・マリノスに復帰することが決まっている。 半年間という限られた時間で確かな結果を残すことは簡単ではない。チーム事情との兼ね合い、チームメイトとの相性だって関係してくる。だが海外に再度渡り、そこで戦い、チャレンジをし、苦悩しながら自分と向き合った時間は決して無駄なわけがない。気持ちを切り替えてまた立ち上がり、戦い続ける。より強靭に、より怖さのあるFWになるために力を蓄える時期だったと振り返る日がくることを信じて。 <了>
文=中野吉之伴