【闘病】「怠けているわけではない」 “筋ジストロフィー”で失われる体力との向き合い方
ヘルパーの支援のもと、一人暮らしをスタート
編集部: 発症後、生活にどのような変化がありましたか? 土屋さん: 病気だから仕方なかったと安堵したものの自分のせいにする癖は抜けず、症状の進行でさえ「頑張りが足りない」と責めてしまう自分がいました。それから、障害者手帳を発行してもらい、ソーシャルワーカーさんから障害者サービスについて説明を受けました。 杖を購入したり、進行に伴って必要な福祉用具をリハビリの技士さんと相談して導入したり、相談できる方が一気に増えてとても心強くなりました。 編集部: 一人暮らしも始められたそうですね。 土屋さん: はい。階段の多い実家での生活が厳しく、バリアフリーの公営住宅で一人暮らしを始めました。家事支援のヘルパーさんに来ていただいています。 病気がわかる前は「人に迷惑をかけないように、なんでも自分でやらなければ!」と思っていたので、最初は人にお願いすることを後ろめたく感じていましたね。今は人を頼ることに慣れ、入浴介助もしてもらっています。 リハビリは週に4回(訪問3回、通院1回)しています。動作全般に時間がかかるので、職場の方にいろいろ配慮してもらい仕事を続けていました。ですが、これ以上は体力的・精神的に辛く、悩んだ結果退職を決断しました。 編集部: 闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。 土屋さん: 家族、友人、医療機関、福祉関係などたくさんの方々に相談できて助けてもらえることがとても心強いです。どんな状況になったとしても自分を責めないこと、自分が一番の理解者であることが何より大切だと感じます。 編集部: もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか? 土屋さん: 「あなたは悪くない、よくがんばっているね。我慢して隠さなくていいから、堂々としんどいから助けてって言っていいよ」と伝えたいです。
幸せに条件はなく、幸せだと感じるのは自分次第
編集部: 現在の体調や生活などの様子について教えてください。 土屋さん: 仕事を辞めた後により詳細な検査をした結果、心筋にも病変があることがわかり、服薬治療の内容が変わりました。一人暮らしを始めて10年経ちましたが、ヘルパーさん、リハビリ、福祉用具の導入で、できないことを補いながら暮らしています。 車を卒業する時や退職など、大きな節目では病気の進行と向き合うことになり、悔しさや悲しさを味わいました。ですが、覚悟を決めて決断した後は、必ずそのおかげで新しい経験を得られました。 編集部: 電動車椅子に乗り始めてから新たな楽しみを見つけられたそうですね。 土屋さん: 電動車椅子に乗り始めてから、外出することが楽しみになりました。車では気づかなかった道端の草花や少し低い目線からの景色が新鮮で、行ったことのなかった公園や遊歩道では野鳥や昆虫を見つけ、自然とふれあう心地よさをたくさん味わいました。 声をかけてくれる人がいたり、立ち往生しているところを助けてもらったり、人との触れ合いも増えて、この町をもっと好きになりました。 風景の写真を撮ることが楽しくなり、Instagramに投稿したり、写真にメッセージを添えたポストカードを作って販売したりしています。2022年には、福祉講演会で講演をする機会もいただき、貴重な経験をさせていただきました。 編集部: 筋ジストロフィーを意識していない人に一言お願いします。 土屋さん: 私自身、筋ジストロフィーのことをそれほど詳しく理解していませんが、もし身体に違和感があったら、「こんなものなのだ」と放置せず、1人で不安を抱えまず身近な人に相談してほしいと思います。 そして、まずは病院を受診することをおすすめします。この記事を読んでこういう病気もあることを知って、参考にしてもらえたら嬉しいです。 編集部: 医療従事者に望むことはありますか? 土屋さん: いつも尽力していただきありがとうございます。はやく治療法が確立することを期待しています。 編集部: 最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。 土屋さん: 今は歩行器につかまりながら歩けますが、この先は分かりません。まだ来ていない未来に不安を抱きながら生きるのは、やっぱり辛いです。 ですが、「今も歩行器で歩けて嬉しい」「洗濯物はヘルパーさんに干してもらおう」と、思いながら暮らしています。幸せを感じられるかどうかは自分次第なので、今病気と闘っている人も、不安だけでなく幸せを見つけて過ごされることを願います。