部活に「外部指導者」導入で生徒は余計に忙しくなる?
部活指導のあり方が問題となっている。長すぎる練習時間や少なすぎる休養日などの課題が指摘され、4月からは外部指導者を学校職員として位置づけて教員の負担を減らす取り組みも始まった。しかし、この制度には意外な落とし穴があるという。部活動の問題を研究してきた名古屋大学の内田良・准教授に寄稿してもらった。
「オリンピック選手を目指しているのか?」保護者も問題視する今の部活
部活動の問題の改善に取り組む団体「部活問題対策プロジェクト」がネット上で実施した署名活動「生徒に部活に入部する・入部しないの自由を!」には、次のような保護者の声が届けられている(匿名性を確保するために、文意を損ねないかたちで文章を編集した)。 「娘はいつも遅くに帰ってきて、夕食もとらずにすぐに寝てしまいます。勉強する余力はありません。家族団らんもできず、土日もいっしょに過ごせません。オリンピック選手を目指しているわけでもないのに、なぜここまで部活に時間を奪われるのでしょうか」 「中学生の息子は、仕方なく入ったサッカー部で、放課後も土日も休みなく練習でした。しかも上手なわけではないので、公式戦だけでなく練習試合にさえも出場できませんでした。学校の教育活動であるならば、勝ち負けにこだわらず、息子にも試合というものを経験させてほしかったです」 保護者の目からすれば、自分の子どもはあまりに疲れ切っているように見え、これが学校の「教育」活動なのかと疑問がわいてくる。現状でも多すぎる部活の練習時間。しかし、今日における外部指導者の導入は、一歩間違えれば、更なる長時間の練習を招きかねない。
部活動改革の要「外部指導者」の導入
この4月から、部活動の外部指導者には、「部活動指導員」という法制度上の身分が与えられうるようになった。「部活動指導員」制度とは、部活動の外部指導者を学校職員として正式に位置づけて、単独での指導や大会引率を可能にするものである。文科省が学校教育法の施行規則を改める省令を公布し、今年度から施行されている。 広い意味での外部指導者は、1990年代後半頃から「開かれた学校づくり」のなかでその必要性が訴えられるようになり、今に至るまで着実に拡がりをみせてきた(神谷拓『運動部活動の教育学入門』大修館書店)。それがついに「部活動指導員」というかたちで法制度化されたのである。