保育の専門家が語る、叱る必要がないのに「ルールだから」と叱ってしまう問題性
それ、本当に叱らなければならないこと?
お子さんを叱るとき、なぜ叱るのか、を考えず「世間でそう言われているから」「みんながそうと考えているから」「前からそういうものだから」となっていないでしょうか。叱る前に「なぜ叱るのか」根本に戻って考えることが必要です。 子どもの頃、学校で「給食を残さず食べよう」と厳しく叱られた経験のある方もいるのではないでしょうか。給食を残さず食べる、というのは、はじめは、料理してくれた人、お米を買うために働いてくれた人に感謝し、農家の方々が作ったお米を大事にしよう、自然の恵みに感謝しよう、という感謝にあふれた行為だったはずです。 しかし、体格も発達段階も違うのですから、食べられる量は違います。だから、感謝して、食べられる分だけ食べればいい、というのが本来の趣旨に沿った行動なのではないでしょうか。 それなのに時が経つと、なんのためにルールを設けたのかが忘れられて「給食を米粒ひとつ残さず食べなきゃいけない」「食べ終わるまで昼休みなし」などルールの形だけが残って厳しい指導として残っているケースが往々にしてあります。「感謝」の気持ちは置いてけぼりになり、「残さない」ことばかりに目が行ってしまうケースです。 これではおいしく楽しいはずの給食の時間が苦痛になってしまいます。感謝をするどころか、嫌で仕方がないというお子さんがいても無理はありません。このような、本来の趣旨と逆効果の結果をもたらす指導はすぐにやめるべきでしょう。 その代わりに、もし、食べられなかったときは、捨てられてしまう食べ物のことを教え、次回から食べられる分だけよそう、おやつを食べすぎないようにする、などの対策を子どもと一緒に考えればいいのです。 同じように、私たち大人は、叱る必要のないときに、「ルールだから」という理由で叱ってしまうことがあります。そんな自分に気づくために大切なことは、物事の根本を見る姿勢です。反射的に叱る前に「そもそも、どうしてそう言われているんだっけ?」と根本に戻って考えてみましょう。