【WHOも警鐘】感染症「麻疹(はしか)」の驚異的な大流行 ワクチン接種率低下が要因か
WHO(世界保健機関)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、麻疹患者数が世界各国で急増しており、懸念すべき状態となっていることに対して、相次いで警鐘を鳴らしました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
WHOとCDCが警鐘を鳴らした内容とは?
編集部: WHOとCDCが危機感を表明した内容について教えてください。 甲斐沼先生: WHOは2023年11月16日、2022年の麻疹患者数が前の年に比べて世界全体で18%増加、死亡者数は43%増加したことを明らかにしました。WHOとCDCの最新の報告書によると、麻疹の推定患者数は900万人、死亡者数は13万6000人となっています。大規模感染(アウトブレイク)をした国は2021年が22カ国であったのに対し、2022年には37カ国に拡大しています。アウトブレイクが発生した国のうち、28カ国がアフリカ地域、6カ国が東地中海地域、2カ国が東南アジア地域、1カ国がヨーロッパ地域でした。CDCのグローバル予防接種部門の担当者は、「麻疹の発生と死亡の増加は驚異的ですが、残念ながらここ数年のワクチン接種率の低下を考えると、予想外のことではありません。ワクチン接種が不十分なすべての国や地域社会では、麻疹患者の発生リスクは高くなります。麻疹の発症と死亡を防ぐためにも早急な取り組みが重要です」と警戒感を露わにしています。麻疹は麻疹ワクチンを2回接種すれば予防可能ですが、2022年には2200万人近くが1回目の接種を受けられず、さらに1100万人が2回目の接種を受けていないということです。
麻疹とは?
編集部: 今回の研究で取り上げられた麻疹について教えてください。 甲斐沼先生: 麻疹は、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。ウイルスの感染経路は、空気感染や飛沫感染、接触感染で、感染力が非常に強いという特徴があります。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%の確率で発症し、感染して発症すると一生免疫が持続すると言われます。感染してから約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ、2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。また、肺炎や中耳炎を合併しやすく、1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。麻疹を予防するためにはワクチン接種が最も有効な予防法です。麻疹患者に接触した場合でも、72時間以内にワクチンの接種をすることで麻疹の発症を予防できる可能性がありますが、高齢者や低免疫状態の場合には、感染後に重症化して死亡することもあります。