「国民の敵」緊縮主義の権化、自民税調や財務省の幹部たちにぴったりな言葉「減税を増税で取り返す懲りない面々」
【ニュース裏表 田中秀臣】 日本経済に何がいま必要だろうか。答えは明瞭で、「減税」と「利上げの停止」だ。 【ひと目でわかる】103万円の壁で注目の「扶養控除」の仕組み 新聞やテレビなどオールドメディアの報道では、7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値が前期比0・3%増、年率換算で1・2%増と速報値から上方修正されたことや、10~12月期の成長率も消費の拡大などを織り込んでプラス成長を予測するなど「楽観的」なムードがある。ただし自動車の認証不正問題や能登半島の震災などで通年での経済成長率がプラスになるかどうかは微妙だ。プラスになったとしてもわずかだろう。 要するに「賃上げ」ムードを政府や財界、連合などがしきりに煽(あお)ったが、力強い経済の再生にはほど遠いのが実情だ。その原因は何か。現在から将来にかけての税金や社会保険料の負担増だろう。将来の負担増が、国民の生活を押しつぶしている。 「年収103万円の壁の見直し」や「ガソリンの暫定税率廃止」といった国民民主党の主導による自民、公明両党との合意は、たしかに画期的な減税政策だ。だが、財務省や自民党の税制調査会の反対行動がこれから出てくるだろう。自民党の宮沢洋一税調会長は3党合意に対して「釈然としない」と記者団に述べるなど不快感を隠していない。 自民党税調の幹部らは「インナー」と呼ばれ、特権的な立場のように思われてきた。国会での民主的な議論とは無縁で、狭い身内だけの理屈で動く人たちである。もちろん財務省が手厚くサポートしてもいる。最近のSNSの進歩により、自民党税調の独善的な姿勢や緊縮主義の弊害が強く指摘されているのはいいことだ。 日本経済を長く低迷させてきた要因の一つは、財政政策の緊縮スタンスだ。不況から完全に立ち直るのを待たずに、増税や負担増をしてしまう。あげくには不況に苦しむ中小企業などを「ゾンビ企業」呼ばわりして、その淘汰(とうた)を進めてしまう。緊縮主義者たちは、中小企業が淘汰されれば、日本の国際競争力が増すといっているが、それは単にトンデモだ。不況が長期化するだけで、いいことは一切起こらない。ネットでは「国民の敵」というハッシュタグ(検索目印)が話題だが、個人的には緊縮主義の権化である自民税調や財務省の幹部たちにこの言葉はぴったりだと思う。 自民党税調の動きは今後も要注意だ。「防衛特別法人税」「防衛特別所得税」という増税案が出てきている。せっかく「年収の壁」などで減税してもまた増税である。この減税したら同じだけ(あるいはそれ以上に)増税というのは、財務省の典型的な発想だ。本当に懲りない連中だ。一方、年金にかかわる「年収の壁」撤廃も現時点での負担増になるが、厚労省は今回の年金制度改革では撤廃を先送りにするという。本当ならば朗報である。 (上武大学教授・田中秀臣)