小惑星「カリクロー」に環があるのは羊飼い衛星のおかげ? シミュレーション研究
小惑星「カリクロー(Chariklo)」は、環を持つ珍しい小惑星です。直径約250kmと小さいカリクローに安定した環がどのようにして存在しているのか、その理由は分かっていません。 今日の宇宙画像 惑星科学研究所のAmanda A. Sickafoose氏とトリニティ大学のMark C. Lewis氏の研究チームは、シミュレーションを通じてカリクローの環が安定化する理由を探りました。その結果、カリクローに直径約3kmの衛星が1つ存在すれば、観測結果と一致する細い環が形成されることがわかりました。 仮に衛星が存在するとしても現在の技術で観測することは困難ですが、この研究結果は環を持つ他の小さな天体にも適用されるかもしれません。
■小惑星「カリクロー」には環がある
太陽系で最も大きな4つの惑星……木星・土星・天王星・海王星には環があります。かつては巨大な天体であることが環を持つために必要な条件であるとも考えられてきましたが、現在ではもっと小さな天体にも環があることが分かっています。 環を持つ小さな天体の1つが、10199番小惑星「カリクロー」です。カリクローには現在、幅数kmの細い環が2本見つかっています。カリクローは惑星以外で環を持つことが確認された初の天体であり、現在でも環を持つ天体としては最も小さな天体です(※1)。これほど小さな天体が環を安定して持つことは予想外の発見であり、当時は驚きを持って迎えられました。 ※1…直径約170kmの小惑星「キロン」は、環を持つことが推定された最も小さな天体ですが、発見から約10年経つ現在でも、環が存在するかどうかは議論のある状態となっています。 環を構成する小さな岩石や氷の粒子は、そのまま放置するとお互いに衝突・合体して、一塊の衛星となるはずです。しかし、天体から余りにも近い距離にある場合は天体の重力が大きな塊を引き裂いてバラバラにするため、結果として衛星にはならず環として存在します。大きな衛星が存在できないこの限界を「ロシュ限界」と呼びます。巨大惑星の主要な環は全てロシュ限界の内側にありますが、小さな天体のロシュ限界は極めて狭く、そのままでは天体自身に降り注いであっという間に消えてしまうでしょう。