2017年「化学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想
2017年のノーベル賞発表まで一週間を切りました。10月2日(月)の生理学・医学賞を皮切りに、3日(火)に物理学賞、4日(水)は化学賞と自然科学3賞を発表。平和賞は6日(金)、経済学賞は9日(月)です(文学賞は未定)。日本科学未来館では毎年、その年の自然科学系3賞を受賞するにふさわしいと思う研究テーマ・研究者を同館の科学コミュニケーターが各賞ごとに紹介しています。 【図】2017年「物理学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想 ノーベル賞は“人類にもっとも貢献した人に贈られる賞”です。そのため、どのメディアもすでに役に立っていることを念頭において予想を立てます。例えば、ノーベル化学賞の日本人受賞テーマとして毎年のように予想される「リチウムイオン二次電池」や「酸化チタンの光触媒能」は、もはや私たちの生活に欠かせません。 しかし、昨年の化学賞「分子マシンの設計と合成」は、人類への貢献とは一体なんなのかを考えさせられるような受賞でした。
幅広い分野にまたがっている化学賞の受賞予想は難しく、「まだ役に立っているとは言えない」テーマでの昨年の受賞によってより一層困難になりました。しかし、逆に言うといろいろな研究に触れることのできる機会でもあります。 今年はどのような研究が私たちをワクワクさせてくれるのでしょうか。日本科学未来館の2017年ノーベル化学賞の予想は、幅広い分野での予想となります。
物質の最小単位、分子のリアルタイム観察
《中村栄一(なかむら・えいいち)東京大学名誉教授》 中村博士は、世界で初めて分子1つの形や動きの変化をリアルタイムに観察しました。 分子とは、約0.1ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)の原子が数種類組み合わさってできた粒子で、物質の最小単位です。 分子の形やふるまい方を知ることは分子の性質を知ることに直結するため、科学者は昔から分子を見る方法を精力的に生み出してきました。その1つに1930年頃に開発された透過型電子顕微鏡(TEM)があります。TEMは原子1つ1つを見ることができます。 しかし、分子は一般的な環境だと常に激しく動き回っています(人に例えると、腕を振り回しながら、激しく動き回っているような状態です)。皆さんもふだん写真を撮るときに被写体が動いていたら苦労しするはずです。それが、分子のスケールだったらどれだけ大変か……。 そこで、中村博士は炭素でできた筒状の分子を釣り針やウナギ筒のように用いて目的の分子を止める方法を生み出しました。