「小池vs蓮舫」の都知事選“何でもあり”の異常事態 売名目的も多数で候補者は56人に
そうした中、今回と対比されるのが、現職と新人の大接戦となった1975年の美濃部亮吉知事(3選出馬)と石原慎太郎前参院議員(いずれも当時)の対決。結果的に美濃部氏268万余、石原氏233万余の得票で美濃部氏が3選に成功したが、「史上初の200万票台の競り合いという構図は今回にも当てはまる」(同)との見方も少なくない。 その一方で、注目度が高い都知事選だけにこれまでも「売名目的の立候補者の多さ」(同)が話題となってきたが、今回の立候補者数は、過去最多だった前回2020年の22人を大幅に上回る56人に激増。このため都内各所に設置される候補者の選挙ポスターを貼る掲示板も前回の倍以上となる大きさの48人分を用意していたが、それでも8人分不足し、都選管は49人目以降の届け出候補者分については当該各候補者にクリアファイルなどを支給し、それぞれが自ら掲示板に固定するよう求めることにした。こうした一連の作業のあおりで本来の都選管の業務遂行にも支障が出る事態ともなった。
さらに、政治団体「NHKから国民を守る党」(立花孝志党首)がなんと24人もの候補者を立て、現行の公職選挙法の“抜け穴”を突く形で、掲示板の占拠部分を“販売”して資金調達するという「狡猾な手法」(同)も表面化した。 ■「何でもありのカオス」にどう対応? こうした選挙の本質とかけ離れた騒動は「次回以降もさらに拡大するのは確実」(都選管)で、その先駆けとして「今回都知事選はすべて異例ずくめで、しかも、選挙の在り方自体が問われかねない、まさに何でもありのカオス」(選挙アナリスト)となり、関係者の頭痛の種は増すばかりだ。
このため、政界関係者の間では「今後の国政選挙や地方選挙のルールの歪みを正すため、政府や与野党が早急に公選法改正などに取り組む必要がある」(自民選対)との声が高まっている。 ただ、「基本的人権の1つである立候補の自由とどう折り合いをつけるか」(選挙アナリスト)など難題が多く、1年後の次期参院選や2025年秋までには確実に実施される次期衆院選までに法改正などにこぎつけられるかどうかは極めて不透明だ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト