Crossfaithが明かす魂の復活劇 傑作アルバムを支える不屈のマインド
Crossfaithが約6年ぶりとなるニューアルバム『AЯK』を完成させた。これまでもエレクトロサウンドとバンドの融合という彼らがずっと目指してきたことがかなり高い次元で実現されており、そういった意味では過去最高傑作だと断言できる内容になっている。 【写真を見る】Crossfaithのメンバー しかし、この作品にたどり着くまでに彼らは多くの困難に直面した。コロナ禍に加え、長年連れ添ったメンバーの脱退や活動休止といった出来事は、メンバーの口から「解散」という言葉が出るぐらいバンドを追い込んだ。実際、今回のインタビューの最中にもメンバーが感極まる場面があったほどだ。 Crossfaithはそこからどうやって蘇り、この傑作にたどり着いたのだろうか。今回は音楽面以上に5人の心の動きや魂の復活劇にスポットを当てて話を聞いた。本記事の読後に改めて『AЯK』に触れるとき、あなたの目の前にはきっと新しい景色が広がることだろう。 ―最初にアルバムの感想をお伝えしておきます。めちゃめちゃカッコいいです。 Koie(Vo) ありがとうございます! ―間違いなく最高傑作だなって。 Teru(Program/Vision) いや、うれしい。 ―今回はそこに至るまでの話からお聞きしたいと思います。コロナ禍があったり、活動休止期間があったり、メンバーの脱退があったり、ここ数年はCrossfaithにとって本当に大変な時期だったと思うんですが、思うように活動ができなかった間、みなさんはどんなことをしたり、考えたりしていましたか。 Koie まず、2022年9月に活動休止になったあとすぐ、「メンバー、1回ちょっと散って」と言って、一人ひとりの時間を過ごそうっていう話になって……そもそも、コロナ禍前に以前所属していたレコード会社から独立して、自分たちのレーベルを作ってそこから作品を出したり、全部自分たちでやっていくということに対してすごくワクワクしていたんですけど、コロナ禍になってもずっと楽曲制作をしたり、ライブをしたり、配信したりってノンストップで動き続けてきて、それにプラスしてコロナ禍におけるフラストレーションもみんなどこかで蓄積していったところがあって。 ―それはそうですよね。 Koie そうこうしているうちにバンドの中がちょっとガクついてきて。そこでさっきの話に戻るんですけど、活動休止するってなったときに「休もう」みたいな。で、1、2カ月ぐらい休みをもらって、俺は実家に帰ってほんまにだらだら過ごして。でも、SNSを見ると周りのバンドは当然活動を続けてるから、そういうのを見てるうちに「ちょっと歯がゆいな」っていう気持ちにもなって。 ―わかります。 Koie でも、その分自分のメンタルを整えることができたし、必要な時間だったのかなって思いますね。 ―Tatsuyaさんはどうしていたんですか。 Tatsuya(Dr) バンドとしては一度休むことにはなったんですけど、自分はドラムを叩くことが好きだから、リラックスしつつも常に腕を磨き続けて、バンドが復活したときにさらに進化したものを届けられるように武器を磨き続けるような活動をしながら、たまに川辺でチルしたり、ゆっくりした時間を過ごしてました。 ―Kazukiさんは? Kazuki(Gt) 僕自身、過去に個人的に活動休止したことがあったので、ほかのメンバーに比べるとその期間中に考えられること、見えるものというのは多少違ったかなと思います。なので、バンドにとってどうするのがいいかとか、そういうことを中心に考えて行動してたと思います。 ―Teruさんは? Teru ワールドツアーをキャンセルして、そこで目の前が真っ暗になったところがあったんで、俺とコイ(Koie)ちゃんの地元は大阪の堺なんですけど、一度実家に帰るっていう話をしたらコイちゃんもついてきてくれて。それで、地元の公園で2人で酒を飲んだりして(笑)。 Koie その頃、Teruはけっこうダウナーやったし、俺もどっちにしろ帰るつもりやったし、ヴァイブス上げれたらな、みたいな。 Teru そこから半年ぐらい時間を空けて去年(2023年)6月にshibuya CYCLONEで復活ライブをしたんですけど、それまでは家族と過ごしたり、時間が癒してくれたりして。でも「このまま何もアクションせんかったら前には進めない」と思ってたので、CYCLONEでやることはライブの半年前ぐらいから決めてましたね。 ―Crossfaithが活動休止を決めた頃、Daikiさんはまだサポートメンバーだったんですよね? Daiki(Gt) はい、そうですね。 ―その頃は何をしていたんですか。 Daiki まあ、絶対戻ってきてくれるだろうなと思いながら、ソロギタリストとしていろんなバンドのサポートをしたり、仲間と曲をつくったり、一人で音楽をつくったりしてました。それまであまり一緒に過ごせなかったこともあったんで、実家に帰って家族と過ごしたりもしましたね。あとは普段できないことをしようと思って、謎に2日かけて東京から江ノ島まで歩いたり。 ―あはははは! Teru 俺も今度やろう(笑)。 ―みなさん割とリラックスしていたんですね。 Teru 怒涛の活動をしてきて俺らも限界がきてたんで、自分たちが今どういう状況に置かれてるのか客観的に見る時間が必要だったんですよね。 ―ということは、活動は一旦止まってしまったけども、Crossfaithを諦めるということにはなってなかったんですね。 Teru Crossfaithは「俺たちはずっとこのメンバーでやっていこうぜ」っていう強い信念のもとに組んだバンドだったんで、メンバーが脱退して、あのときに思い描いてた未来と違うってなったときに、「このままやっていけるんだろうか」って思うことはありました。やっぱり、一人でいる時間が長いとネガティブな思考とか不安がループしていくじゃないですか。だから、活休中に一度メンバーを家に集めて、「Crossfaith、ここまでなんじゃないか」って言ったことはあって。 Koie 「解散、しようか」みたいな。でも、俺は解散する気はまったくなかったんで、「Teruがほんまにそう思うんやったらいいけど、まだ何も達成してないし、ダサくても這いつくばってでも続けるほうが俺はカッコいいと思う」みたいなことを言って。Teruは幼馴染だし気持ちはすごく理解できるんだけど、「無理!」って(笑)。 Teru それだけ追い詰められてたというか。たとえば、スキーって自分が進みたい方向に目を向けると自然とそっちに向かって行くじゃないですか。それと同じで、暗い未来を思い描いてるといつの間にかそっちにたどり着いちゃうんですよ。メンバーに解散のことを伝えたときは、俺自身そういう未来しか思い描けない状態だったんですよね。でも、さっきコイちゃんが言ってた言葉もそうだし、メンバーみんな俺とは違う未来を見てることに気づいて、「これはメンバーに乗っからせてもらおう」って。自分に未来が見えてなくても、ずっと一緒に戦ってきた仲間には見えてるんやったらそこに乗っかればいいんだっていう気持ちになって。 ―うんうん。 Teru そもそも、俺自身もバンドを辞めたくて言ったわけじゃなかったんで、「じゃあ、もうちょっとやってみようか」みたいな感じになったっすね。 ―当時は、今いるところから逃げたくなってたというか。Teru なんか、わけわかんなくなってたんですよね。もう、何が正解かもわかんなかったし。