自民政調会長の「年収103万円の壁」めぐる「根本おかしい」発言に怒りの声が続出する必然
「野党各党は壁をとっぱらえとか言うが、根本おかしいなと思う。なんで学生が103万円まで働かないといけないのか」 【写真】石破首相に体調不良説…居眠り&寝坊で“ビジュアル”にも変化 自民党の小野寺五典政調会長(64)が15日、札幌市で開かれた党セミナーで講演し、国民民主党が訴えている「年収103万円の壁」の引き上げについて言及。アルバイトをしている大学生らを扶養する親の税負担への対応が課題となっていることについて、「根本おかしい」と疑念を呈したことに対し、ネット上で怒りや反発の声が広がっている。 自民、公明、国民民主3党は親の税負担を軽減する「特定扶養控除」について、年収上限を現行の103万円から引き上げる方向で調整しているものの、いまだ合意には至っていない。 小野寺氏は「学生は将来のためにしっかり勉強してほしい。学業に専念できるような支援を国会で議論すべきだ」と訴えていたのだが、この発言が報じられた直後から飛び交っていたのが、《裏金自民は現実を理解していない》《国民生活を何も分かっていない》といった声だった。 ■国立大の運営費交付金を削減したのは第二次安倍政権 「学生の本分は学業だ」--。小野寺氏はこう言いたかったのだろうが、近年の学費高騰に伴い、その学業に専念できない環境になりつつある。学生がアルバイトをせざるを得ない一因だ。 「労働者福祉中央協議会」(中央労福協)が今年6月に実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート」調査によると、大卒の奨学金利用率は45.2%に上り、奨学金利用者のうち、日本学生支援機構の奨学金借入総額は、平均値344.9万円で、過去の調査と比べて最も高くなった。 支援機構の奨学金利用者の約7割が今後の返済に不安を抱えており、返済の負担感に4割台半ばが苦しさを実感しているという。 23年のデータによると、毎月の返済額は1.5万円で、返済期間は14.5年。仮に20代前半で大学を卒業しても、30代後半まで返済が続く。都内の裕福な家庭環境で育った学生であればともかく、多くの学生は奨学金の借入を抑え、少しでも将来負担を軽くするためにアルバイトをしていると言っていいのだ。 《世界一高いといわれる年間3000万円以上の歳費をもらっている国会議員に庶民の暮らしは分からない》 《議員歳費、領収書のいらない旧文通費、それに裏金をためてきた自民党ならではトンチンカン》 SNS上ではこんな声が出ている。 中央労福協の調査では、子ども1人当たりの年間授業料(大学)について負担可能な金額を問うたところ、中央値は44.1万円で、現在の国立大の標準授業料(約54万円)を下回る結果だった。 第二次安倍政権は2013年に「国立大学改革プラン」を閣議決定し、国立大に投じる運営費交付金が段階的に削減された。これが現在の学費負担増につながっている。小野寺氏が「学業に専念できるような支援を国会で議論すべき」というのであれば、議員歳費のカットとともに国立大の運営費交付金を増やすよう呼びかけてほしい。 ◇ ◇ ◇ 国民民主が引き上げを求めている「年収103万円の壁」。●関連記事【もっと読む】で《「103万円の壁」は年金生活者らには無縁…物価高対策は解決できるのか?》【さらに読む】で《「年収106万円の壁」撤廃で年間9.6万円の負担増に…働き控え解消の先に待つのは「雇い控え」》を取り上げている。