【RIZIN】平本蓮と朝倉未来は「陰性」──禍を転じて榊原CEOが起ち上げる「新RIZINアンチ・ドーピング・プログラム」が見据える未来とは?
◆ビジネスになることが、システムを進める
ただし、そこには、実務面と経済面でハードルがある。だが、ピンチをチャンスに変えるのが榊原CEOだ。現在は米国の検査機関・SMRTL(スポーツメディカルリサーチ&テイスティングラボラトリー)に空輸しているドラッグテストが、日本でビジネスになれば、そこに取り組む団体や企業が増えるだろう。 「日本のプロスポーツのなかで、なかなか“ここの検査機関に行けば徹底的なドーピング検査をしてもらえる”という機関が無いんですね。だから、そういう機関をこれから独立してRIZINのなかで先生方とアクションを起こすことが礎となって(いくかもしれない)。どの団体も海外選手も中立に公平に調査できるのか、は簡単な話ではないですが、目指すところはそこまで行きたいと思っています。ほかの競技(のテスト)も請け負えるような組織に進化させられるような意識を持って」と、RIZINが率先して第三者機関としてのドーピングチェックシステムを構築していく意欲を語る。 記者からは「日本スポーツ協会(Japan Sport Association/JSPO:旧日本体育協会)に加盟している団体と加盟していない・加盟が認可されていない団体との差や、WADAやJADAなどが統括組織があることによって、格闘技団体のドラッグテストへの壁があるとしたら、日本企業でWADAやJADAに加盟していなくても同レベルの検査を安価に行える可能性はあるか」という質問が諌山医療部長にあった。 「現状でRIZINはじめコンタクトスポーツで、日体協みたいなスポーツ組織に属するということはないのは、皆さんご存じの通りなのですけど、我々医療部とししては、RIZINがそのスポーツのレベルまで目指したいとやっています。ドーピングではプロ野球しかり、Jリーグしかり、そこまでしてないのは経済的な問題かと思う」(諌山氏) 実は、日本にもWADA認定のドーピング検査における検体分析機関(WADA Accredited Laboratory)が存在し、東京五輪2020では、株式会社LSIメディエンスのアンチドーピングラボラトリーが、約8400検体(尿 約6800検体、血液 約1600検体)の分析を行っている。大会期間中は278名(LSIから90名、海外のWADA認定分析機関から49名、国内の大学から139名)が、24時間体制で分析を行い即日報告、さらに遺伝子ドーピング検査、乾燥血液スポット分析といった最先端の分析手法を世界で初めて採り入れたラボラトリーとしても有名だ。 そこまでいかずとも比較的安価に尿検査を行えるラボと提携し、検査要員を確保できれば、格闘技団体のみならず、日本のほかスポーツ団体が利用する可能性がある。 JMOC(日本 MMA審判機構)は出来た。JSPOに格闘技団体が入れないのならば、各団体が協力し、日本版アスレチックコミッション、日本格闘技版アンチ・ドーピング機構を作るタイミングが来ているのかもしれない。2029年秋にも国内初のカジノ施設が誕生するなか、スポーツベッティングが解禁されれば、試合の公正さを保つ機関はマストとなる。 既報通り、フルコンタクトスポーツであるファイトスポーツは、直接ダメージを与えるという点で、ドーピングで自身が得るもののみならず、対戦相手が失うものも大きい。 今回の王座戦のドラッグテスト結果は「陰性」だったが、ドーピングとは何か、なぜドーピングがいけないのか、それを出来る限り防ぐために何が必要なのかは、引き続き本誌でも考えていきたい。
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