「フレーミング技術」の概要と意図をNPB審判員へ直訴…アマチュアコーチのプロ春季キャンプ奮闘記
ブルペンでたった一人、審判団へフレーミングの意図を訴える
火中の栗を拾いに行く形となったが、こうなった以上は腹をくくるしかなくなった。覚悟を決め、資料を用意し、コーチ陣へプレゼンしたときと同様に、話し方の練習をして意見交換会へと準備を進めた。ところが、秋季キャンプと同様、予定通りとはいかないのが今回の緑川さんのキャンプだ。 「意見交換会の当日、僕がブルペンへキャッチャー陣の様子を見に行ったら、審判団が皆さん、キャッチャーの後ろでストライクコールの練習をしていたんです。 立場上、挨拶しないわけにもいきませんから、僕から挨拶に行ったんですけど、そうしたら森(健次郎)審判長に『今日は説明会があるようだけど、どんな内容なの?』と聞かれて、僕は『メディアにもちょっと奇抜な取り上げ方をされて話題が先行してしまい、フレーミングやホークスの取り組みが審判の方にあまり良い印象がないんじゃないかと思いまして。決して審判を騙すためにやっているのではないことを説明したいんです』とお伝えしました。 そうしたら『え、じゃあどういうこと?』と聞かれたので、その場で森さん、笠原(昌春)副審判長、スーパーバイザーの平林(岳)さんを相手に、フレーミングの概要や意図、実際にやっている取り組みを立ち話で1時間半くらいしゃべってしまいました」 奇しくも、当初提案されていた通り、ブルペンでの立ち話で、しかも長時間を自分一人で説明してしまうことになった。ただ、そこでの会話の手応えは上々、審判団からの反応も好意的で、すっかり打ち解けた雰囲気になったという。 ここで審判団の評価のポイントとなったのは緑川さんの「捕球時にミットが落ちる、流れるとストライクでもコールしづらい部分がある」という考え方だ。 変化球に対して、変化するボールを追うようにミットを動かして捕球をすると、たとえストライクゾーンを通過したとしても、捕球するときは大きく動いた形になってしまい、ボールもベースを通過した位置から遠くなってしまう。例えるなら’16年に当時巨人のマイコラスが捕手の小林誠司の捕球時にミットが落ちてしまったことに怒り、話題になった場面が分かりやすいだろう。 これを防ぐために、フレーミングではボールの軌道上にミットを入れて、ボールの進行方向から逆にアプローチすることでミットが流れることを防ぎ、いいポイントで捕球することにある。このことで、いわゆる“ビタ止め”と呼ばれるキャッチングにもつながることになる。 「審判の方ともお話をさせてもらって『ミットが落ちるより上がった方がいいし、外に流れるよりも内に入った方が、ジャッジもしやすいと考えています』と伝えたところ、『それはそうだ』と言っていただけました。 例えば、2ストライク後、見逃し三振の場面で、ストライクゾーンを通過したのにミットが落ちたり、流れたりすると審判もコールしづらいというか、気まずいじゃないですか。だとすれば、ストライクでもボールでも、常にミットが落ちたりせずにビシ、ビシッと捕球することができれば、審判もリズムよくジャッジしやすくなると考えています。 ただフレーミングのアプローチとして、ボールの軌道上にミットを入れるために予備動作が大きくなり、大きく動かしているように見えるかもしれません。ただ、それは際どいコースやゾーンから外れた球をストライクにするためにやっているのではないとも説明しました」