「ヒットを打つことをあきらめた」プロ注目右腕を前に、守備とバントで戦った綾羽、シード・八幡商を破る金星!【24年夏・滋賀大会】
<第106回全国高等学校野球選手権滋賀大会:綾羽4-1八幡商>21日◇3回戦◇HPLベースボールパーク 【トーナメント表】滋賀大会 21日までの試合結果 春夏通じて初の甲子園出場を目指す綾羽がシード校の八幡商を下した。 八幡商の先発はプロ注目右腕の田上 航(3年)。187㎝の長身から140キロ台のストレートを投げ込み、綾羽打線は1回、2回と三者凡退に抑え込まれる。 「2回でヒットを打つことを諦めました」と綾羽の千代純平監督。打てなくてもバントなどを駆使して得点を奪う方向に切り替えた。 すると、3回表に流れが生まれる。先頭の7番・北川 大夢(3年)が四球で出塁。犠打と暴投で一死三塁のチャンスを作る。ここで9番の武村 晴輝(3年)が「右に強い打球を意識していた」と前進守備の二塁手のグラブを弾く適時打を放ち、先制点を奪った。 さらに4回表には先頭の3番・楠橋 琉生(3年)が四球で出塁すると、4番・横井川 友輝(3年)が投手前に犠打を決める。すると、田上が一塁に悪送球。この間に楠橋が一気に生還して、2点目を奪った。 なおも無死二塁とチャンスは続き、5番・小代 遼太郎(3年)の犠打と6番・酒井 飛輝(3年)のスクイズで追加点を奪った。 9回表にも押し出しで1点を加えた綾羽は2安打で4得点。打たなくても点を取るという野球を実践した。 3連続バントで2点を奪った4回の攻撃がその象徴だろう。バントは手堅い戦法と見られがちだが、千代監督は「攻めのバント」と位置づけ、「難しいところに転がして、あわよくばランナーも相手の体勢を見て二つ進んだりということを考えていました」と語る。こうした姿勢が相手のミスを誘発し、得点に結びついた。 また、この試合では綾羽の度重なる好守も光った。特にそれが見られたのが4回裏、一死一塁からライト前にライナー性の打球が飛び、これを右翼手の酒井がダイビングキャッチ。その後、二死満塁とピンチが広がったが、今度は左翼手の小代がレフト前に落ちそうな打球をまたしてもダイビングキャッチして、無失点で切り抜けた。 冬場は球際の強さを磨いてきたそうで、「ユニフォームが泥々になるまで、死ぬほどノックを受けていました」と小代は話す。さらに大会期間中は「攻める守備を作っていきたい」(千代監督)と27連続アウトを取るまで終わらないノックを実施。公式戦同様の緊張感を持てるように取り組んできた成果が十分に発揮された試合となった。 味方の好守にも助けられ、先発の最速143キロ右腕の武村は8回1失点の好投。9回裏も2番手の小森 結斗(3年)が一死一、二塁のピンチを招いたが、ショートライナーで飛び出した二塁走者もアウトにして併殺が成立。八幡商の反撃を食い止めた。 「今日は本当によく守ったと思います」と試合を振り返った千代監督。「練習でやってきたことしか試合で出せない」とはよく言われるが、どれだけ綾羽の守備が鍛えられているかがよくわかる試合だった。