「売れ行き全然違う」 激化する産地間競争、勝ち抜く鍵は赤い高級ブドウ? シャインマスカットの価格頭打ちで栽培急拡大、「3色」そろえて勝負
長野県開発の赤い高級ブドウ「クイーンルージュ」
2021年に初出荷された長野県開発の赤色系ブドウ、クイーンルージュの栽培面積が県内で急拡大している。県農政部の推計によると、06年に販売が始まった同じく県開発のナガノパープル(黒色系)の面積を今年中に上回る見通しだ。 【写真】長野県が「ぶどう三姉妹」として普及している3品種
フレッシュさがあり人気拡大、価格も好調
市場では引き続き白系のシャインマスカットの引き合いが強いが、クイーンルージュは赤系ブドウが市場に少なく、黒系よりもフレッシュさがあることから人気がじわりと拡大。価格も好調で、導入する農家が増えている。
「ナガノパープル」追い抜く見通し
いずれも県が開発した大型ブドウ品種で黒系のナガノパープルと、赤系のクイーンルージュ。全国的な知名度が少しずつ広がり、県内で巨峰やナシから転作する果樹農家が相次ぐが、生産拡大の勢いは新種のクイーンルージュに分がある。まだ木が若いため生産量ではナガノパープルに及ばないが、3年後をめどに追い抜く見通しだ。
「シャインバブル」で価格頭打ち…
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した白系のシャインマスカットは近年、爆発的に人気が出て「シャインバブル」と言われてきた。だが全国に生産が広がり、産地間競争は激化。2022年から価格に頭打ちの兆しが出た。現在、シャインマスカットと同様に、種なしで皮ごと食べられるナガノパープルとクイーンルージュの販売が好調で価格が高く、農家の評判も上がっている。
「売れ行きは全然違う」
「地元の若手農家で東京に売りに行くと、以前はシャインマスカットだけでも売れたが、ここ数年はいろんな種類を持っていくと売れ行きは全然違う」。荻原農園(中野市)の荻原和博さん(33)はそう話す。ブドウを知る消費者が増え、目と舌が肥えてきたことから、単品種の出来栄えだけではアピール力が足りず品種の「多様化」が鍵になるという。
他県との違い、「三姉妹」でアピール
県内の主なブドウ産地ではこれまで、白系ブドウの生産が多い傾向があった。県は最近の市場動向を踏まえ、白、黒、赤の「3色」のブドウがそろうことを長野県の強みとし、他県との違いを打ち出す戦略。シャインマスカットとナガノパープル、クイーンルージュを「ぶどう三姉妹」としてアピールに力を入れる。