なぜ酒井宏樹は浦和レッズ移籍を決断しチームは推定移籍金2億円を払ってまで獲得を決めたのか?
ミャンマー戦後に合流したU-24代表で、酒井のプレーをピッチ上で目の当たりにしたMF久保建英(ヘタフェ)が、身長183cm体重70kgの堂々たるボディに宿る能力にあらためて驚嘆したときの言葉を聞けば、酒井の現在地がおのずと伝わってくる。 「身体の使い方や相手への当たり方、アジリティーなどがちょっと抜けているというか。何ならフランス代表の右サイドバックとやっていても、まったく遜色ないと思いました」 ロシアワールドカップを制した王者フランス代表の右サイドバックと、一緒にプレーしているような思いに駆られたと久保は言いたかったのだろう。そして、サイドバックに求められるパワーとスピード、テクニック、判断力のすべてをトップレベルで搭載する酒井の動向や希望を察知し、今夏の加入へ向けてオファーを出したのが浦和だった。 今シーズンの浦和の右サイドバックは、オフにシントトロイデン(ベルギー)へ期限付き移籍したU-24代表の橋岡大樹に代わり、ヴィッセル神戸から加入した西大伍が担っている。ただ、8月に34歳になるベテランの西には、攻撃力をさらに生かす意味でボランチや、あるいは一列上げたサイドハーフで起用する青写真も描かれている。 日本代表として65試合に出場し、ブラジル、ロシア両ワールドカップにも出場した酒井の加入はその構想を具現化させるだけではない。マルセイユでは左サイドバックやセンターバックとしてもプレーし、高い評価を得ているポリバレントぶりは、主戦場となる右サイドバックを中心に浦和のチーム力そのものを力強く押し上げる。 今シーズンから浦和を率いるスペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督は、徳島ヴォルティス時代から4バックと3バックを併用してきた。浦和では4バックを基本布陣とするなかで、先にデンマークのミッティランから加入が発表された189cmの長身DFアレクサンダー・ショルツ、そして酒井の存在は戦い方の幅を大きく広げる。 たとえば昨年10月のカメルーン代表との国際親善試合で、日本は後半開始からそれまでの4バックを3バックにスイッチ。結果は引き分けだったものの、相手を零封した要因のひとつはほとんど練習していなかったにもかかわらず、右サイドバックから3バックの右ストッパーへのポジション変更に、臨機応変に対応できた酒井の存在だった。 もともとはセンターバックだったが、規格外の高速クロスを放てる身体能力の高さにネルシーニョ監督が惚れ込み、右サイドバックとして2011年4月にJ1リーグ戦でデビューした。日本、ドイツ、フランスで、それぞれ順応し、結果を残してきた自負があるからか、酒井はこんな言葉も残している。 「すべての国でサッカーが違うので、それぞれへ適応していく過程で自分のプレースタイルも変えてきた。その意味で自分を見ている方々に成長したと判断していただけるのであれば、本当に嬉しいことだと思っています」