週刊ダイヤモンド「トヨタ・ホンダ・日産の『通信簿』」が面白い?自動車メーカーOBが辛口批評
● トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車を サプライヤー幹部が評価する「通信簿」 最も興味深いのが、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の「通信簿」と題して、「役員のビジョン」「値上げ許容度」「サプライヤーへの支援」「生産計画(内示)の確からしさ」「交渉の態度、コンプラ意識」それぞれの項目についてサプライヤー幹部250人からアンケートを取っている点だ。 読んでいて思わず笑ってしまったのだが、自動車メーカーの「役員のビジョン」が低いと回答した、サプライヤーの役員本人は果たしてビジョンにあふれているのだろうか? それは横に置いておくとして、結果からいえばサプライヤーは、トヨタ>ホンダ>日産の順に評価しているらしい。 また、サプライヤーが自動車メーカー幹部らに接待をしている実態が、なんとも下世話だ。トヨタ、ホンダ、日産とも、1人あたりの接待費用が役員であれば1~2万円、部長級だと5000円~1万5000円、社員だと5000~1万円程度だという。加えて、ビール券や現金の贈答についても赤裸々に書かれている。 特集では、『現金や金券の提供が常態化しているとすれば、自動車産業のなれ合い体質、排他性を象徴するものであり、大問題だ。EV化や自動運転の普及に置いていかれつつある日本の自動車産業のスピード感のなさの要因の一つとすらいえるかもしれない』と非常に手厳しく書かれている。 ● 次の特集に望みたいこと サプライヤーの課題も浮き彫りに この先は、自動車メーカーOBとして、望みたいことと、記述内容の指摘をしたい。 まずは望みたいこと。特集の形を取る限り、アンケートを基に論じるのは当然だろう。ただ、アンケートで「経営が厳しい」「自動車メーカーから値上げを認めてもらっていない」と答えるサプライヤーの業績は右肩下がりなのだろうか? 筆者の経験では、「経営が厳しい」と嘆くのはサプライヤーのお決まりのパターンというか、実際に決算書をよく読むと、厳しさが感じられないケースも多々あった。 そして、「人件費の増加分をどの程度、取引価格に転嫁できましたか」の問いに対して、「転嫁できていない」から「80%以上」まで回答の幅が広すぎる。なぜ、この差が出たのかを深掘りして分析するほうが、自動車産業全体のためになるのではないか。 これまた筆者の経験談だが、某社の調達担当者からサプライヤーの申請書を見せてもらったことがある。その申請書には何の根拠も書かれておらず、何の説得性もなかった。 調達担当者は丁寧にヒアリングを試みたらしいが、サプライヤーは「人件費がかさんでいるから、上げてくれ」の一点張り。調達担当者は、公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」にしたがって公表資料(公的機関が出している統計資料など)で合理的に交渉しようとしているが、相手と話すらできない……と困っていた。これは一例だが、サプライヤー側に対する課題を浮き彫りにする姿勢も必要だろう。