59歳シングル女性、定年前に「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」のガチ見学に。何歳まで働くべきか模索中
◆退職までがんばって節約して… このサ高住は、一部の2階建てを除き、ほとんどの住居が長屋形式の平屋です。全戸南向きの角部屋で、高い勾配天井と広い窓のおかげで、室内は明るく解放感があります。 ただし玄関扉は、室内の様子が外からうかがい知れるようにガラス戸です。また、サ高住ならでは、毎朝、安否確認をされます。各棟は隣接しており、人目があります。1人暮らしの終末期の高齢者にとっては安心材料でしょうが、アラ還にはまだ、プライバシーのほうが気になりそうです。 紀美子さんは、12坪(約40平米)の1LDK、10坪(33平米)のワンルームも、チェックしました。ワンルームはさすがに「荷物が入らないか」と却下しましたが、12坪あれば意外に住めそう、と感じたそうです。あとは予算です。基本の間取りのまま、何のオプション工事もしなくても、12坪の部屋だと1920万円。 「もし60歳で退職するなら、この間計算したら、退職金は1900万円でした。だから、今年、来年と、退職までがんばって節約して、あと100万貯めようと思って。そうしたら2000万。このサ高住が買えるかな、と思って」
◆何歳までがんばってこの会社で働くのか 紀美子さんが勤めているのは、誰もが知る有名企業です。大学を卒業して入社して以来、総合職としてずっと勤めてきました。 ですが昨今、バブル前後に入社した社員たちは、会社から激しい肩たたきやリストラに遭っており、同期の男女もすでにたくさん退職しています。紀美子さんはそれでも、がんばって仕事を続けてきました。まだ会社でやれることがある、やりたいことがある、と思ってきたからです。 そこへ、会社が65歳定年を導入しました。60歳を過ぎると、給料はそれまでの3割~4割ほどに減る、と職場の先輩から教わりました。それでも業務量は変わらず、職務内容も変わりません。 ストレスとプレッシャーと責任感は同じまま、給料だけが下がる。そうまでして勤め続けるのか、何歳までがんばってこの会社で働くのか、いま、紀美子さんは迷っています。
◆どこに住むか問題 迷っているもう1つが、どこに住むか問題です。 紀美子さんは、姉と2人姉妹。父は早くに亡くなり、いま86歳の母が働いて育ててくれました。その母が実家の一戸建てを建て替えた20年ほど前、敷地内に、姉夫婦は一家4人の家を建てました。 実家の建物の名義は母ですが、固定資産税は紀美子さんが払っています。実家の新築資金は紀美子さんも援助しましたが、「好きにしていいよ」と中身は母に任せっぱなしでした。 すると母は新しい家に、紀美子さんの部屋と、さらに「将来の、紀美子さんの子どもの部屋」までも作りました。38歳だった当時、紀美子さんには結婚の予定もなかったのに、です。
元沢賀南子