センバツ2022 1回戦 金光大阪、悲願の校歌響く 初出場から20年で初勝利 /大阪
第94回センバツ大会第3日の21日、金光大阪は第2試合で日大三島(静岡)と対戦し、4―0で快勝。春夏通算4回目の甲子園で初勝利を飾った。学校創立・野球部創部40周年、センバツ初出場から20周年の節目の年の悲願達成に、同窓生や保護者らで埋まった三塁側アルプス席では、約1600の笑顔がはじけた。【山口一朗、吉川雄飛】 一回表に2死二、三塁のピンチをしのいだ金光大阪にその裏、好機が訪れた。1死後、「試練は乗り越えられる奴(やつ)にしか訪れない」という言葉が好きだという2番・福冨龍之介選手(2年)が左翼へのライナー性の安打で出塁。「1球を大切にする」を心掛ける古川温生投手(3年)が粘って四球を選び、昨秋の公式戦でチーム最高打率の4割5分7厘を記録した4番の岸本紘一主将(3年)が中前へはじき返して満塁とした。 ここで「甲子園で成長した打撃を見せたい」と語っていた貴島琉惺(きしまりゅうせい)選手(3年)。「初球から振っていこうという気持ち」で最初はファウルだったが、続く速球を振り切ると、打球は二塁手の頭を越えて2人が還った。相手のミスもありさらに1点を加えると、約1600人で埋まる三塁側アルプス席から大きな拍手が湧いた。 その後は昨秋の東海大会を制した強豪・日大三島を相手に、なかなか追加点が奪えない展開が続いた。金光応援団が息をのんだのは五回表だった。2死から失策、四球、内野安打で満塁とされ、昨秋の打率が5割を超える相手の4番打者が登場した。だが、1ボール2ストライクと追い込み、古川投手が岸本主将のミットを目がけて一番自信のあるスライダーを投げ込むと、強打者のバットは空を切った。古川投手の母・幸恵さん(46)は、岸本主将の母・孝予さん(48)とすぐそばで応援。幸恵さんは「いつも通り金光らしく粘っている」と安堵(あんど)した。 六回に松沢優大選手(2年)の右前打、今北玲央選手(2年)の送りバント、キャリー パトリック波也斗選手(2年)の左前打で1死一、三塁の好機を作ると、9番・沢田拓磨選手(3年)が投前スクイズを決めて4―0に。2年生の活躍に、同学年の金田花梨さんは「このまま行ってほしい!」と、並んで見ていた河本友紀乃さん、高橋彩希さんと一緒にメガホンを振った。 九回表2死一塁。日大三島の代打にフルカウントと粘られながら、バッテリーは自信のある変化球を振らせてゲームセット。記念の年に「甲子園で勝って皆で校歌を歌う」という夢を成し遂げた。 ◇マーチで後押し ○…三塁側アルプススタンドでは、金光大阪のオリジナル演奏曲が13年ぶりに甲子園で鳴り響いた。軽快で明るい「金光マーチ」は全4種類。遅いテンポから段々と速くなる威圧感たっぷりのチャンステーマ「Go Fight 金光」は初回から流れ、先制攻撃を仕掛ける選手たちを後押しした。吹奏楽部の巽優作部長(3年)は「久しぶりに甲子園で演奏ができるのは光栄なこと。曲が少しでも選手たちの力になれば」と笑顔で話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇実直な努力、花開いた 貴島琉惺(きしま・りゅうせい)三塁手(3年) 甲子園初打席は一回1死満塁の好機。相手投手の力ある速球を中前に運んだ。2点先制打に「(詰まった打球で)きれいなヒットではなかったが、落ちて良かった」と語る。 昨秋の公式戦の打率は2割5分。府予選でバントを失敗した場面が、心に引っ掛かっていたという。三塁側アルプス席で観戦した母・由美子さん(47)は「バッテリーが頑張っているのに、自分は役割を果たせていないと話していた」と語る。だが、基礎を重視し、確実性を高める意識を持って練習を続けてきたことが、大舞台で花開いた。出塁後、相手投手の暴投の間に、一気に三塁まで進む好走塁も見せた。 横井一裕監督は「近畿大会では思うようなプレーができなかった部分もある。実直に取り組んで努力した。貴島らしいヒットだと思う」と評価した。 二人兄弟の兄。「役割を果たした」長男に、母は「甲子園の第1打席から安打が出た。成果が出た。感無量です」と述べた。【山口一朗】