【海外トピックス】バイデン政権がCO2排出規制を緩和しEVシフトをスローダウン。欧州にも波及か?
欧州で増える中国製車への対応ではEUと意見の相違
EUの2026年のCO2規制値のレビューがどうなるか予想するには時期尚早ですが、EVの販売で苦戦するVWやメルセデス・ベンツのようなドイツメーカーと、小型で廉価なEVを続々と投入するフランス勢とでは見解に違いが出てきそうです。また、欧州で増えている中国製のEVに対する追加的関税についても、EUは中国政府の補助による不当な競争のエビデンスがあるとみているようですが、中国ビジネスが3割以上を占めるドイツメーカーは、自由貿易の原則を盾にこれに反対しています。ツィプセCEOも、記者の質問に対して、「BMWはそれほど大きな損害を受けてはおらず、中国車の脅威は誇大に喧伝されている」と述べました。 ステランティスも、昨年秋に中国のリープモーターに15億ユーロの資本出資を行い、中国の外での同社の車両販売の主導権を握ったほか、リープモーターはイタリアに工場を作る計画とも報道されています。このため同社のカルロス・タバレスCEOも最近のインタビューでは、中国メーカーを危険視する発言をトーンダウンしています。CO2削減規制値についても、利害の異なるEU諸国の間で、自動車業界、各国議会や政府、環境保護団体を巻き込んだ意見調整は容易ではなさそうです。(了) ●著者プロフィール 丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。