今も年間1万人以上が感染 せきや体のだるさが続いたら要注意?令和に知っておきたい『結核』の脅威と症状 発症のカギを握るのは「免疫力」
マスクでは防げない!?『空気感染』する結核
結核の感染経路として最も注意すべきなのが「空気感染」です。感染者がくしゃみやせきをしたとき、結核菌を含んだ唾液や粘液が空気中に飛び散ります。粘液の水分は時間とともに蒸発しますが、中に含まれる結核菌は「飛沫核」となって、空中を漂います。数マイクロメートルと極めて小さいこの飛沫核を吸うことによって感染するということです。 人間の体には、侵入してきた病原体を排除するフィルター機能が備わっていて、結核菌は鼻・のど・気管でもある程度防ぐことができるようですが、防ぎきれないこともあるということです。 新型コロナウイルスは「飛沫感染」のため、他人の飛沫を防ぐ・自分の飛沫を外に出さないという意味でマスクが推奨されましたが、結核は飛沫核が空気中を漂うため、呼吸可能な状態であれば、マスクをしていても吸ってしまいます。 このため結核対策は、感染を完全に防ぐことよりも、発症させないように免疫力を高めるなど体を強くすることがポイントだということです。
気づきにくい初期症状 進行すると「肺に穴が開く」ケースも
宮下教授によりますと、結核に感染して発症する人は10%から20%だということです。症状が出ずに結核菌がなくなるケースがある一方、症状が出ないまま菌を保有し続けるケースもあるということです。 結核の初期症状には「体重減少」「食欲不振」「寝汗をかく」があり、せき・微熱・体のだるさといった症状が2週間以上続く場合も、早めに医療機関を受診するのがよいでしょう。 そして、結核が進行すると、血の混じった痰(たん)が出る→血を吐く→呼吸困難に陥る、という症状が出てきます。 肺の中で結核菌が増殖を続けると、組織が破壊され、肺に穴が開く場合もあるということです。肺に穴が開いている状態は菌が増えていることを示していて、穴が大きくなるにつれ、人にうつしやすくなるということです。
結核予防のカギは「免疫力」 栄養と睡眠が重要
結核の発症予防には、免疫力が鍵を握っています。宮下教授によりますと、免疫力が高ければ、そもそも感染しづらく、たとえ感染しても発症しない可能性が高くなります。免疫力を上げるためには、「栄養と睡眠をしっかりとる、適度な運動をすることが大切」だということです。 年齢とともに免疫力が低下するため、高齢者は特に注意が必要です。結核を発症した人の約4割が80歳以上という統計があります。また、発展途上国では、若い人でも栄養が十分にとれていないことなどもあり、免疫力が低く、結核になるケースが多いそうです。 さらに、宮下教授は「過去に感染し発症しなかった結核菌が、体内に残っていて、年齢(免疫力の低下)とともに再燃するパターンも多い」と指摘。そのため、若い人も免疫力を高めておくことが重要となります。