【角田裕毅F1第21戦分析】スプリント後のマシン変更で好転。SCと赤旗で追い抜きは叶わずも「ウエットタイヤの判断はよかった」
2019年のF1日本GP以来となる予選と決勝レースを同日に行うワンデー・イベントとなった今年の第21戦サンパウロGP。現地時間朝7時半から開始された予選で、角田裕毅(RB)が見事3番手を獲得した。 【写真】2024年F1第21戦サンパウロGP予選 3番グリッドを獲得した角田裕毅(RB) これは角田が2023年の最終戦アブダビGPで獲得した自身予選最高位となる6番手を上回る自己最高位となるとともに、2004年ヨーロッパGPでの佐藤琢磨の2番手、2012年ベルギーGPでの小林可夢偉の2番手に次ぐ、日本人F1ドライバー歴代3位となる好記録だった。 またチームとしてもRBになった今シーズンの最高位となった。なお、前身のアルファタウリ時代の2021年のカタールGPでピエール・ガスリーが2番手からスタートしているが、予選自体の成績は4番手が最高位。イタリア・ファエンツァのチームが予選でトップ3に入るのは、2008年イタリアGPでポールポジションを獲得したセバスチャン・ベッテル以来のことだった。 自身初めて予選後のトップ3ドライバーによる記者会見に出席した角田は、こう語った。 「金曜日の走り始めから土曜日のスプリントまで、ずっとクルマが奇妙なフィーリングを抱えていたので、スプリント後にクルマに多くの変更を加えたことが、日曜日に好転した理由だと思います。3番手という結果は、もちろんすごくうれしいですが、同時にレースは71周の長丁場。予選同様、この後行われるレースも気を引き締め直して臨みたい」 この3連戦の初戦アメリカGPではレース終盤にスピンを喫し、前戦メキシコシティGPでは予選でブレーキをロックさせてクラッシュしていた角田。予選3番手からスタートするサンパウロGPでは、巡ってきたチャンスを自らのミスで逃すわけにはいかなかった。 「雨のコンディションでは追い越しやディフェンスが難しいですが、とにかく1周1周ミスなく、クリーンに走ることを目標にします」 スタートで3番手を死守した角田は、その後もミスのない走りで表彰台圏内を走行していた。勝負の分岐点となったのは雨脚が強くなり始めた25周目すぎからのピットストップのタイミングだった。ここで角田はピットインしてウエットタイヤに交換する判断を下す。 「ウエットタイヤに履き替えた判断はよかったと思います」と言う角田は、ピットアウトすると、同じ周にピットインして、インターミディエイトタイヤに交換していた先頭のジョージ・ラッセル(メルセデス)や2番手のランド・ノリス(マクラーレン)より1周3秒以上速いタイムで猛追していく。 しかし、その直後セーフティカーと赤旗が出たことで、角田の『ウエット選択』という賭けは露と消えた。セーフティカーが出たことで、コース上でのオーバーテイクはできなくなり、その後の赤旗によって、ステイアウトして角田の前に出ることに成功していたアルピーヌ勢は労せずしてタイヤを交換して、角田の前から再スタートすることができたからだ。 もし赤旗が出ていなければ、角田がインターミディエイトに履き替えたノリスとラッセルを抜き、さらにステイアウトしていた古いインターミディエイトタイヤを履いたアルピーヌ勢らを抜いていた可能性は高い。そうなっていれば、レースリーダーになっていたかもしれない。 しかし、それは実現しなかった。ただし、それは角田がミスしたからではない。角田がコントロールできないさまざまな要因がそうさせた。だから、7位に入賞した角田がうつむく必要は1ミリもない。 [オートスポーツweb 2024年11月04日]