メンタル不調で休職・退職社員が急増!なぜ「調子が悪い」と正直に言うのは難しいのか
これが、退職者が発生した時に想定される損失です。この試算を目にすると、計画通り採用することも大切ですが、退職させないことも非常に重要なことだとよく分かります。 ● メンタル不調者の急増に 官民の対策が追いついていない 更に気になるのが、この状況を政府や人事労務担当者が理解しているにも関わらず、メンタルヘルス対策に関する状況が改善されていないことです。 職場におけるメンタル不調の対策は、「社員の健康を守る」という観点から日々検討され、手が打たれています。産業医との契約やストレスチェックの実施、ハラスメント窓口の設置などが法制度化されていることからも、さまざまな施策が考えられていることが分かります。 そして実際に、厚生労働省の令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、60%の企業で上記のようなメンタルヘルス対策が実施されています。 突然辞めてしまう社員が増えているのは、みんな肌感覚で分かっています。そして企業としても決して手をこまねいている訳ではないのです。 しかし、日本ではメンタル疾患者が年々増え続け、ここ数年は著しい増加を示しています。我々は、メンタル不調との付き合い方を真剣に変えていくべき時期にさしかかっています。
● あなたは「調子が悪い」と 正直に言う勇気はありますか? また、会社で実施されるメンタルヘルス対策で一般的なのはストレスチェックです。 ほとんどの企業でストレスチェックが行われていますが、みなさんは、ご自身のストレスチェックの結果を分析できていますか? 前回と比べてどのように変化したのか、その原因は何か、自分の結果が集団の中でどの辺りに属しているのか、把握していますか? ストレスチェックによって、高ストレス者がスクリーニングされ、高ストレス者に対しては産業医面談が推奨されます。仮に、自分が高ストレス者でなかった場合、それでメンタルヘルス対策になっているでしょうか。逆に、高ストレス者だった場合、自ら希望して産業医面談を受けますか? その面談では何を話しますか? 「調子が悪いです」と言えますか? 現行のストレスチェックの仕組みは非常に有意義ですし、会社として最低限実施しなければいけない法的義務があります。ですが、ストレスチェックの実施だけで、社員の健康を担保できているわけではないのです。社会が変化する中で、その社会変化に対応した取り組みを行う必要があると私は考えています。
藤田康男