メンタル不調で休職・退職社員が急増!なぜ「調子が悪い」と正直に言うのは難しいのか
メンタル不調者の多くが「健康」と「病気」の境目を把握できていない――。そう語るのは「健康な組織」実現を目指して500社以上にのぼる企業のメンタルケアサポートを行う株式会社Smart相談室CEO・藤田康男氏だ。じつは、現代の日本ではメンタル不調による休職者や退職者がでている事業所の割合は10%を超えているという。メンタル不調者の多くが静かに「病んでいく」日本のビジネスパーソンに筆者が感じる危機感とは?※本稿は、藤田康男『社員がメンタル不調になる前に 会社の責任?それとも……?』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● メンタル不調者は「健康」と 「病気」の境目を把握できていない 私は、多くの社員が「メンタル不調になる前に」相談できる環境をつくり、日本の生産性を上げていきたいと考え、法人向けオンライン対人支援プラットフォームを提供する「株式会社Smart相談室」を設立し運営しています。 このSmart相談室を立ち上げる前に、私は仲間と「メンタル不調になる前に」対応することができないものかと、メンタル不調者200名に聞き取り調査を行いました。その結果、次の2つのことが分かりました。 1つめは、メンタル不調者は、どこまでが「健康」で、どこからが「病気」なのか分かっていません。その結果、ほとんどのメンタル不調者が、周りから声をかけられて初めて自分が「病気」であることを認識します。特に真面目だったり、優秀だったりする社員は、多少のストレスを感じていても、「当然のこと」と認識して仕事に没頭します。 しかし、その途中のどこかで「病気」になっているのです。
本人にしてみれば、声をかけられてからようやく気が付くので、「もっと早く声をかけてくれれば、状況が変わっていたのに」などと言います。「もっと早めに声をかけてくれれば、外食やショッピングに行くなどして気分転換をし、また来週から頑張れた。どうして、病気になってから声をかけて来るんだ」と。 2つめは、調査を続けて行くと、調子が悪くなったそもそもの理由が、「自分の評価に関わるようなこと」「パートナーのことなどかなり個人的なこと」「見方によれば些細なこと」だったりするのです。 私は、この2点から「病気ではない健康な状態でも、自らの判断で気軽に話ができるような仕組み」を社内につくり、そこに相談すれば良いのではないか、と考えました。 しかし、仮にその仕組みがあったとしても、自分の評価に関わるようなことを会社には相談しないでしょうし、プライベートなことや、パートナーに関する悩みを、上司や人事労務担当者に相談することは常識的に考えてもないだろうと思いました。