30歳で抜てきされた商業高校の校長、進路指導に取り組み1年で国公立大合格者を輩出 「ここしか入学できなかった」自信をなくしていた生徒に教えた「挑戦を楽しむ」姿勢
定員割れに悩み、経営的に厳しい状況にあった福岡の私立女子高が、短期間で大きな変貌を遂げている。中心となっているのは、30歳で校長に抜てきされた柴山翔太さん(33)だ。国公立大を目指す生徒はほとんどいなかった中で、講師として赴任した1年目に小論文の課外授業に取り組み、20人が国公立大に合格。「創立以来の快挙」と周囲を驚かせた。 校長就任以降は、生徒主導での学校PRなど次々と改革に取り組む。かつては学力に自信がなかったり、自己肯定感が低かったりする生徒が多く、停滞感があった学校の雰囲気も一変。柴山さんが掲げた「挑戦を、楽しむ。」のスローガン通り、生徒たちは目を輝かせて学校生活を送っている。(共同通信=河村紀子) ▽「思う存分やってほしい」期待が背中を押し 「困ってるなーというのが最初の印象でした」。柴山さんは2020年春、福岡女子商業高校(福岡県那珂川市)に国語の講師として赴任した当時をこう振り返る。 1950年に県立高の分校として開校した。1964年に旧那珂川町立福岡女子商業高校になり、2017年に私立に移管された。「地域では知られているが、県内では無名」(柴山さん)。入学者は定員の半分にも満たず、経営的に厳しい状況だった。
そのため、やんちゃな子でも入学してもらうような状態。言うことを聞かない生徒と先生の追いかけっこは日常茶飯事だったといい、「家が近いから」「ここしか行ける所がなかった」と入学してくる生徒たちは、自信を失っているように見えた。 柴山さんは前任校の神戸の私立高で小論文指導の経験を積み、国公立大に多くの生徒を進学させていた。福岡女子商業の状況を見て「可能性がある」と感じた。次の赴任先を探し、他の学校の面接を受けた時に「やりたいことがあっても、10年は我慢して」と言われたが、福岡女子商業からは「思う存分やっていい」と期待されたことも背中を押した。 ▽「国公立大にだって行ける」小論文の課外講座を開始 全国的に商業高校や女子高が少子化や志願者減少の影響を受けている。学校側にも危機感はあり、商業高校でも進学できることを強みにしようと考えていた。柴山さんは赴任後、進路指導に早速取りかかった。 だが、生徒の反応は鈍かった。「行こうと思えば、国公立大にだって行ける」と話しても「女子商のこと知らないで来ちゃったんだね」と生徒に言われ、同僚からも「前任校とは違いますよ」とやんわり諭された。