30歳で抜てきされた商業高校の校長、進路指導に取り組み1年で国公立大合格者を輩出 「ここしか入学できなかった」自信をなくしていた生徒に教えた「挑戦を楽しむ」姿勢
「それだけ言うなら、君が校長をやったらどうですか」 教員経験しかない自分が、30歳で校長になる。柴山さんは即答できず、悩みに悩んだ。校外の知人に相談すると、背中を押す言葉をくれた。同僚も「やるしかないじゃん」「支えるけん」と応援してくれた。何より、生徒に挑戦を求めている自分が、挑戦をしない選択肢はないと腹をくくった。全日制高校では史上最年少の校長になった。 ▽TikTokで学校をPR、制服も一新 今年で校長になって3年目。予算など、普通の教員なら触れなかったことに頭を巡らせ、責任の重さも痛感するが「校長がやる気になれば、たいていのことは実現できる」と笑う。 その言葉通り、次々と新しいことに取り組んできた。生徒を集めるために学校を宣伝したいが、十分な予算はない。考えついたのは、生徒によるPRだった。生徒も教員も楽しそうに登場する動画を作成し、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に掲載した。中には850万回再生を超えるものもある。今は正式な部活動「キカクブ」として学校パンフレットの作成も担う。
生徒の声が反映されることも多く、その一例が制服だ。1人の生徒が校長室に駆け込み「制服が変わったら、女子商の人気がもっと出ると思うんです」と熱弁した。柴山さんはその生徒を責任者に任命し、プロジェクトチームを結成。メーカー側とのやりとりを重ね、新しい制服を決めた。 ▽学校は「失敗していい場所」 柴山さんが福岡女子商業に赴任して4年目。入学希望者も増え、2020年度に95人だった新入生は2023年度は217人になった。小論文講座を受ける生徒も今年は約50人と増えているという。 今、柴山さんが大切にしているのは社会とのつながりだ。企業とのコラボレーションや、第一線で活躍する起業家などの講演を積極的に実施する。「高校生の時に、社会との距離を知ってほしい」と思うからだ。 数年前、ある生徒が「ユーチューバーになりたい」と相談してきた。自分は面白いという自信があり、卒業後はユーチューバーとして生きていくと宣言した生徒に柴山さんが提案したのは「夏休みにやってみたら?」。生徒は実際、夏休みの3週間で活動してみたがチャンネル登録者数は伸びず、「大学に行きます」と方針転換した。