30歳で抜てきされた商業高校の校長、進路指導に取り組み1年で国公立大合格者を輩出 「ここしか入学できなかった」自信をなくしていた生徒に教えた「挑戦を楽しむ」姿勢
それでも、高卒と大卒では賃金差が実在すること、家計が苦しくても修学支援制度があることを含め根気強く説明。「興味があったら、来てみて」と小論文の課外講座への参加を呼びかけたところ、高校3年生の30人ほどが集まった。 ▽やる気を引き出す「小論文ノート」 小論文講座は2020年5月から始まった。大学入試の過去問を使い、文章中に出てくるキーワードや、取り上げられているテーマを解説し、実際に書いてもらう。文章を書くテクニック論は最小限。「この問題ならこう書く、という型にはめると、生徒は飽きてしまう」との考えからだ。 最も重視するのは「生徒の知的好奇心を引き出すこと」と話す。添削する際も、一人一人と「どうしてこう考えたの」「この資料はどこから引用したの」とやりとりを重ね「やればできるかも」という思いを持ってもらうようにした。 「生徒たちのやる気は、なんぼでも引っ張りようがある」と柴山さんが見せてくれたのは、小論文講座を受けた生徒たちが半年間で作った「小論文ノート」だ。
消費税の軽減税率、SDGs、人口減少…。取り上げるテーマも、まとめ方もそれぞれ。新聞記事を貼ったり、自分の考えを書いたりしたルーズリーフをまとめたファイルは分厚く、ずっしり重い。講座で気になった言葉や分からないことをまとめ、知識を自分のものにしていく。 半年間で小論文を書く経験を積み、知識や自分なりの考えを蓄えた生徒たちの姿は、当初とは見違えた。小論文講座1年目、前年度0人だった国公立大の合格者は20人。「奇跡」「快挙」と注目を集めた。 ▽「君が校長をやったら」理事長の思いがけない言葉 ちょうどその頃、柴山さんのことを理解し、取り組みを後押ししてくれた校長が交代すると耳にした。「もっと一緒に学校を変えたい」という思いが強かった柴山さんは、福岡女子商業の理事長に直談判した。 学校をこう変えていきたいというビジョンがあること、校長のリーダーシップが重要だということ…。4時間に及ぶ話し合いの末、理事長から思いがけない言葉が飛び出した。