「聞いてるふり」は通じない? 集中しない生徒をリアルタイムで把握 教員からは期待、「管理強化」に懸念も
「わくわく」「ちょっと怖い」という生徒たち
若手の教員はどう受け止めているのか。 ある女性教諭は「生徒の集中度が低く出たら、ショックな面はあるかもしれない。でも教員の一番の仕事は良い授業をすること。現実は受け止めないといけない」と語った。ある男性教諭は肯定的だ。「データには授業のいいところも悪いところもはっきり出る。毎時間はともかく、定期的に測定することで効果的な授業改善ができるのでは」 次に、1年3組の生徒たちに感想を聞いた。「データを取って授業が良くなるなら歓迎」「自分たちが関わった取り組みが、もしかしたら世界に広がっていくかもしれないのが楽しみ」「わくわくする」 新技術の可能性への期待が次々と出てくる。脈拍を常時測定されることに抵抗はないのだろうか。ある生徒は「脈拍ぐらいなら、いい」。
「ばれるのはちょっと怖いかも」
どんな時に集中できないかも挙げてもらった。すると「先生がずっと話しているときとか…」と素直な答え。それでも、顔は先生の方に向けるよう心がけているという。私も身に覚えがあるが、今回のシステムでは「聞いているふり」は通用しなくなるかもしれない。 懸念する声もあった。「個人情報が盗まれないかな」。すると、すかさず「脈拍って、盗まれるの?」と別の生徒から突っ込みが入った。自分の脈拍の特徴を知られることで何か問題が起きるのか、イメージが浮かばない様子だ。 ある生徒はこう話した。「集中していないのがばれるのは、ちょっと怖いかも」。おどけた口調で「集中しないと退学になるかな」と冗談を言う生徒もいた。
教育委員会は「生徒の評価には使わない」
こうした声に学校側はどう応えていくのだろう。 青木校長は「成績には反映させないし、個人情報漏えいにも細心の注意を払うので心配はない」。鷲宮中では試験実施の最中で、さまざまな配慮をしているという。とはいえ、今後もし全国に普及していったら、集中度の高低で生徒を評価し、通知表などに反映させる学校が現れる恐れはないのか、気になるところだ。 久喜市教育委員会の担当者はこのシステムについて、こんな表現をした。「漫画の『ドラゴンボール』に出てくる『スカウター』のよう」。生徒を値踏みする目的で使われる懸念については「分かります」と理解を示しつつ、こう強調した。「あくまでも狙いは授業改善で、どうやって教育の質を高めるか。評価のためではない」