「聞いてるふり」は通じない? 集中しない生徒をリアルタイムで把握 教員からは期待、「管理強化」に懸念も
「脈拍はうそをつかない」
そもそも、脈拍で集中度は測れるものなのだろうか。今回の測定の仕組みはこうなっている。 (1)登校した生徒は、それぞれに割り当てられたリストバンド型の端末を装着する。端末は生徒の脈拍を刻一刻と記録。 (2)そのデータは、教室の隅に置かれた小さなボックス型の機器に自動送信。集約され、インターネットを通じてサーバーへ。 (3)サーバー上では、脈拍データが特別な計算式に当てはめられ、一人一人の集中度が割り出される。結果は先生の手元のノートパソコンに折れ線グラフで表示。グラフは保存され、授業後に見返すこともできる。 今回のシステムを提供しているのは元国立健康・栄養研究所協力研究員の高山光尚さんと、ヘルスケアIT企業のバイタルDX(東京)。高山さんに聞いたところ、脈拍に着目するのは、身体の機能を調整する自律神経との関係が深いためだ。 「脈拍はうそをつかない。自分ではコントロールできないから」 長年の研究から、脈拍を通じて心身の健康状態やストレスなどを把握することができるようになったと説明する。その上で、集中力が高い状態を「リラックスしすぎず、ストレスが強すぎもしない状態」と設定し、集中度を測定しているという。
生徒の集中力が急上昇!その瞬間、先生は「ポケモン」を語っていた
システムの試験導入を推進している青木真一校長には、狙いがある。 「授業改善に役立てたい。良い授業には教員の経験と勘が大切だと言われているが、そこにエビデンス(根拠)を取り入れる意義は大きい」 実は鷲宮中では2021年11月~22年2月にも集中度を把握する研究が行われた。当時はリアルタイムでの表示はできなかったが、それでも授業改善のヒントが多く得られたという。 例えば、授業中は集中度が総じて低く、休み時間になると集中度が高まる生徒がいた。生徒はトップクラスの成績。「この生徒にとっては、授業の課題が簡単過ぎた」と推測できた。また、教員が一方的に話し、生徒の反応が薄かった授業は、集中度もいまいちだった。 さらに、一部生徒の集中力が急に高まったタイミングを調べたところ、教員が人気ゲーム「ポケットモンスター」について話していた瞬間だと分かった。 鷲宮中学校には20~30代前半の教員が多い。「経験と勘が乏しい若手の指導力向上に、特に役立つはず」。今後、360度カメラで撮った授業動画とリンクさせる計画もあるという。