フリーランス新法でどう変わる?フリーライターが行政と法律の専門家の話を聞いてきた【11/1施行】
取引条件の明示で「トラブルの芽」を防ぐ
フリーランス法は、フリーランスと発注事業者の間の取引の適正化や、フリーランスの就業環境の整備のために定められたものです。 なお、この法律での「フリーランス」とは、「企業や自治体等の組織からの業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」を指します。フリーランスが消費者から仕事を依頼されたり、自分の作品をネットで販売するようなケースは対象外です。 フリーランス法で公正取引委員会の管轄となる取引適正化パートの柱となるのは、以下の3つ。 1.取引条件の明示 2.報酬支払期日の設定・期日内の支払い 3.7つの禁止行為(受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し) このなかで、セッションを通して特に強調されていたのが、取引条件の明示義務でした。 「業務委託をする際、発注側は報酬の額と支払期日、委託内容などを明示しなくてはなりません。これによって口約束によるトラブルの未然防止に繋がりますし、両者で取引条件を話し合うきっかけにもなります。発注者側にとっても、適切な条件で発注したという証拠になるという点で重要です」(武田さん) ただし、明示のしかたは必ずしも契約書である必要はなく、メールやSNSのメッセージでもOK。取引条件が書面として残っていればよいといいます。 フリーランス・トラブル110番を担当する堀田弁護士からは、こんな実務的なアドバイスも。 「業務開始時に決まっていない事項があっても問題ありません。『なぜ決まっていないのか』『いつ頃決まる予定か』を明示し、決まった時点で追加で明示すればよいのです」(堀田さん)
育児・介護、ハラスメント…フリーランスの働き方を守る新制度
フリーランス法では、フリーランスの働き方の多様性に配慮した具体的な保護措置が盛り込まれています。特に注目されるのが、育児・介護との両立配慮とハラスメント防止措置です。これは単なる“お願い”ではない、と厚労省の立石さんは指摘します。 「育児・介護との両立配慮義務について、発注者は明確なプロセスを踏む必要があります。フリーランスから要望があった場合、まず真摯に検討し、できることを決定し、速やかに回答する。このプロセスをしっかり踏むことが求められます」(立石さん) ハラスメント防止措置も重要なポイントです。フリーランスはハラスメントを受けても「個人」で対応せざるを得ず、逃げ場がないのが現状。そこで、発注者側に体制整備が義務付けられました。 さらに、仲介事業者の役割も明確化されました。「再委託の場合、業務委託契約を締結する時点で、ハラスメント防止措置や連絡窓口の設定、事実確認への協力などを取り決めておくことが望ましい」と立石さん。実際の就業先との調整役としても、積極的な役割が期待されているといいます。