初の好機、みなぎる力 琴桜、偉大な祖父追う―大相撲
重圧との闘いに向き合っている。 最高位への挑戦権を初めて手にした琴桜は「考えても一緒。やれることを全てやって臨むだけ」。黙々と番数を重ねる姿からは緊張感も漂う。得意の右四つの形を入念に確認する日々だ。 しこ名の継承を生前に認めてくれた祖父が1973年初場所後に横綱昇進を果たした際の推挙状を幼い頃からたびたび目にし、「その地位に行くことがどれだけ厳しいものであるかは感じてきた」。重みは分かっている。 元日に祖父の墓参りをして先場所の初優勝を報告。墓前には、佐渡ケ嶽部屋の力士が横綱になった時に土俵入りするためのスペースが設けられている。「しっかり挑戦してつかみ取る」。綱とりへの決意を改めて強くし、「自分が持っているものを信じる」と誓った。 父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は大願成就に向かっていく心境をおもんぱかり、昇進の話題を避けているという。それも、息子が「先代師匠との約束を守る、というのが心にあるはず」と信じているからだ。在りし日の祖父と語った夢が原動力。機は熟した。 部屋にとっても横綱の誕生は悲願。琴風、琴欧洲、琴光喜、琴奨菊がかなえられなかった夢を託され、「挑戦できることに感謝してやっていく。やるしかない」と表情を引き締める。相撲一家の「3代目」。背負った宿命を力に変え、勝負の15日間を戦い抜く。