夫にだけ暴力や暴言を止められず、キレ散らかした後は自己嫌悪。自分と向き合い負のループから抜け出すまで【書評】
アンガーマネジメント、という言葉がある。自分の中に湧き上がる怒りをコントロールして、円滑な生活や人間関係を手に入れよう、という話だが、人によっては「そんな簡単にできれば誰も苦労はしない!」と、さらにそれで余計なムカムカを溜め込んでしまう人もいるのではないだろうか。 【漫画】本編を読む
そんなアンガーマネジメントの方法のひとつとして有名なのが、「怒りのピークである6秒間をやり過ごす」という6秒ルールである。しかし怒りで頭に血がのぼっている時に、そんな冷静な方法を思い出せるはずもなく。半ば反射で大声や、手・足などの暴力が出る。物を投げる。そんな乱暴な行動の後に、自分の荒っぽさを後悔する…。自分でもどうしようもない「怒り」を抱えがちな人にぜひ触れて欲しいのが、『キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~』(田房永子/竹書房)だ。
本コミックエッセイの著者の悩みは、自分の夫へ過剰なまでの「怒り」をぶつけてしまうことである。 普段はどちらかといえば温厚で、荒っぽいことも好きではない性格。しかし時々夫に対して無性に腹が立つと、手に負えない獣が暴れるように夫に対して怒りをぶつけてしまう。 暴言や大声、泣き喚く。物に当たる。自暴自棄になって家から飛び出す。相手に暴力をふるう。いわゆるDVと呼ばれる行為は男性から女性に向けてのものが話題にのぼることが多い。しかし、本書のように女性から男性へ向けた暴力行為も、立派なDVのケースのひとつである。
とはいえ著者自身も、怒りでわけがわからなくなる自分に対して「嫌だ」「こんなふるまいを止めたい」とも思っている。思ってはいるがそう簡単に自分の挙動は止められず、「どうしてこうなってしまうのか」と悪循環の思考サイクルに囚われる日々。 著者も触れているように、いわゆる女性の暴力的ヒステリーを理論や体系立てて改善・治療するためのノウハウは、これだけ情報が溢れている今でも非常に少ない。 ヒステリックな己の一面を治そうと様々なことに挑戦する中、出会ったのが「ゲシュタルトセラピー」だった。「ゲシュタルトセラピー」を通して、己を客観視する方法を知っていく。過去の母親との関係から、自身のキレやすい一面に気づいた著者。昔の母親とのやりとりを一人二役でこなすことで、これまで上手に自覚できていなかった自分の心に気づき、衝動的な怒りを少しずつコントロールする術を手に入れるのである。