夫にだけ暴力や暴言を止められず、キレ散らかした後は自己嫌悪。自分と向き合い負のループから抜け出すまで【書評】
怒りの制御に留まらず、自分で自分の心にきちんと耳を傾け、自分の気持ちや思考を正しく把握すること。これは感情のコントロールや、引いては自分が「生きやすく」生きるために、とても重要なことだとも言える。 喜び、怒り、嬉しさ、悲しみ。喜怒哀楽と呼ばれる様々な感情は、人それぞれの中にあるある程度形式の決まったトリガーがきっかけで引き起こされる。自分が何をすると嬉しく、楽しくなるのか。誰といる時に怒りを感じることが多いのか。どういった時に悲しくなるのか。セラピーに通い続ける中で、著者はそんな自分の感情・行動パターンに気づいていく。
もちろんそれがすべてではないかもしれない。けれど多少なりとも傾向と対策が掴めれば、何を根拠に自分でも前後不覚になるほど怒りに支配されるのか。何をしている時に自分の気分が落ち込んでしまうのか。事前にそういったマイナスに陥る自分を、回避できるかもしれないのである。 重ねて言えば、それは自分1人で見つけるのは難しいかもしれない。 自分が人と違うところ、自分だけが持つ特徴やポイントは、結局他の誰かと比較することでしか気づけない。自分ではおかしいと思っていたことを他者から「別に普通だよ」と思われることもあれば、まったく違和感のないことを「それはおかしい」と言われることもある。 自分1人の中で凝り固まっていた常識。それを崩してくれるのもまた、自分では気づけない他人からの視点なのだろう。
本著にはコントロールできない怒りを制御するための、具体的な行動や思考についても記されている。 が、これはあくまで著者の場合には有効であっただけの話。あなたが抱える問題に対しては、もしかしたらまったく別のアプローチが有効な手段になるかもしれない。とはいえ、こうしてキレる癖を改善した著者の姿は、同じように「キレる自分」を治したいという人にとって、ある希望ともなるのではないだろうか。 コントロールできない怒りで大事な人を傷つけ、そして自分自身もボロボロに傷ついてしまう前に、コミックエッセイという手軽な作品で、その改善の入口を見つけてみて欲しい。 文=ネゴト/ 曽我美なつめ