冷え性と不眠の深い関係…就寝時は薄手の靴下に替えるのが良い理由とは?
Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。 【図解】一日に必要な睡眠時間 寒さが身にしみる季節になりました。この季節の困りごとの一つに、手足の冷えやふとんの中の温度が眠りの質に影響することがあります。一体どういうことでしょうか?
冷え性で眠れない
睡眠時間には季節変動があります。一般的に夏よりも冬の方が睡眠時間は長くなりますが、これは日照時間が短くなることと関係しています。日の出の時刻が遅くなるため、睡眠リズムが遅れ気味になって起床がつらくなる経験をお持ちの方も多いでしょう。 冬には、このような日光と関連した睡眠問題の他に、気温(室温)と関連した睡眠問題が起こります。 その代表は冷え性で、睡眠の質が低下したり、不眠症に陥ったりすることがしばしばあります。冷え性は手足の血行が低下することが原因の一つで、動脈硬化があると更に症状が悪化します。 レイノー病という病気もあります。冷え性よりも症状が強く、寒さやストレスなどが誘因となって手足の血行が悪くなり、冷えやしびれ、痛みなどが生じる病気です。冷え性やレイノー病は若い人でも見られます。 冷え性やレイノー病で睡眠の質が低下する原因は、しびれや痛みだけではありません。手足の血行不良そのものが睡眠に悪影響を及ぼすことが知られています。そこには体温調節の異常が深く関わっています。
脳の温度が低下しないと寝つきが悪くなる
本コラムでは、睡眠と体温の関係について何度か解説してきました。 私たちの脳の温度(脳温)は体内時計の指令に従って一日の中で1℃ほど変動します。脳温がもっとも高くなるのは、ふだん寝つく時間の2時間ほど前です。就寝前に脳温が低下し始め、睡眠中に降下を続け、明け方に最低になります。 この夜間の脳温の低下と睡眠(特に深いノンレム睡眠)との間には深い関係があり、何らかの原因で脳温がうまく低下しないと寝つきが悪くなったり、深いノンレム睡眠が減少したりします。 脳温が低下できなくなる原因としてもっとも多いのが、手足の血行不全です。体内には熱を産生する機能(代謝や筋肉の収縮)はありますが、冷蔵庫のように体を冷やす機能はありません。 そのため脳温を低下させるには、体の表面から熱を逃がすしかありません。車で言えばラジエーターに当たるのが皮膚で、特に手足が大事です。 就寝時刻の数時間前から手足(特に手のひらや足底など)の皮膚表面を走る毛細血管が拡張して、血流が増加します。体の深部から流れ込んだ温かい血液が、皮膚表面を流れる際に外気温との差により熱が奪われます(放熱)。 さらに、皮膚表面から汗が蒸発する際の気化熱によって効率的に放熱が行われます。就寝前に放熱がスムーズに行われることで急速に脳温が低下し、寝つきが良くなるのです。