冷え性と不眠の深い関係…就寝時は薄手の靴下に替えるのが良い理由とは?
就寝前に体を温める
冷え性やレイノー病、動脈硬化では手足の血行が悪くなっているため、放熱がうまくいかず、夜間に脳温が高止まりして睡眠の質を低下させてしまうことがあります。 治療を受けて血行を改善することも効果的ですが、自宅でも実践可能な対策があります。 冷えを感じていると交感神経が刺激されて、ますます毛細血管が収縮してしまうので、就寝前に靴下を履いたり、入浴することで手足の血行を良くすることができます。 また、就寝前の1時間程度、リラックスタイムを設けると副交感神経が優位になり、毛細血管が拡張します。ゆっくり体を横たえるだけでも重力に逆らって(血管を収縮させて)血液を頭に上らせる必要がなくなり、放熱が促されます。 入浴は血行改善だけではなく、就寝時の発汗も促すのでお勧めします。電気毛布などを利用するのも効果的です。最近は電気湯たんぽなども人気があります。
手足が温まったら薄手の靴下に
ただし、ふとんの中の温度を高くしすぎるのは問題です。先述の通り、睡眠中は明け方まで皮膚からの放熱が続きます。ふとんの中の温度が高すぎると、皮膚表面からの放熱がむしろ妨げられてしまいます。 手足が十分に温まって血行が良くなったら、ふとんの中の温度は体表面の温度より低いほうがいいのです。 就寝時には薄手の靴下に替えたり、電気毛布であれば数時間後に切れるようにタイマーをセットしたりすることで、ふとん内を適温に保つことができます。 最近のふとんは高機能なので、いったん体温でふとん内温度が体表面温度に近くなるとそれを保つ効果があります。
三島和夫(みしま・かずお)
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。