ニューヨークで示した核兵器廃絶への覚悟「アメリカで証言できれば世界を変えられる」 平均年齢85歳、核禁止条約会議で語った被爆者の言葉は日米の若者の心を揺り動かした
核廃絶を世界に訴える高校生平和大使を務めた経験のある岡さんは、被爆者や沖縄戦の体験者らの証言を聞き、世界平和の重要性を肌で感じてきた。それだけに被爆者の高齢化に危機感をにじませた。「明日にでも核兵器を廃絶しないといけない。私たちにも時間がない」。将来の目標は国連の職員として核軍縮に携わることだ。 国連本部の議場では、広島と長崎から派遣された2人の現役の高校生平和大使が被爆地の悲願を訴えた。「一緒に核廃絶を」。英語の原稿は直前まで何度も練り直した。大役を果たした後、そろってほっとした表情を見せた。 広島市の私立AICJ高校1年の尾崎心泉さん(16)が「もっと多くの被爆体験を聞き、核廃絶を目指して平和活動に取り組みたい」と語った。長崎県立長崎東高校2年の安野美乃里さん(17)も目を輝かせ「被爆体験を直接聞ける最後の世代。世界に発信できてうれしい。自分たちが被爆者の体験や思いを継承していく上での大きな一歩になった」と振り返った。
同じ議場で、広島市出身で赤十字国際委員会の若者代表の大学生高垣慶太さん(21)は「核被害に国境はない」と強調した。演説しながら頭に浮かんだのは広島市の平和記念公園や、長い時間をかけて対話した被爆者の姿。演説後に「世界から核兵器がなくならないのは、核被害の苦しみがまだまだ知られていないから。本当に核兵器が自分たちを守ってくれるのか、考えなければいけない」と語った。 ▽ニューヨークで行ったデモ。それを見た米男性は「非核は理想だが難しい」 被爆者や若者は街頭でも声をからした。身を切るような寒さの30日朝。日本政府に条約参加を求め、ニューヨークにある日本総領事館の前で集会を開いた。「被爆者からの手紙です」。長野県松本市の医師で、若い医療・介護従事者でつくるグループで平和活動に取り組む河野絵理子さん(27)は、通勤する人たちにビラを配った。長崎で原爆に遭った岐阜市の木戸季市さん(83)の体験が英文でまとめられており、木戸さんら被爆者も共に街頭に立った。 「NO NUKES(非核)」の横断幕を見て受け取った人もいれば、無関心そうに見えながら手に取る人もおり、50枚ほどが短時間でなくなった。手応えを感じた河野さんは「被爆者の存在を広く知ってもらえるかも。面と向かって届ける大事さを、今後につなげたい」。