ニューヨークで示した核兵器廃絶への覚悟「アメリカで証言できれば世界を変えられる」 平均年齢85歳、核禁止条約会議で語った被爆者の言葉は日米の若者の心を揺り動かした
ジャマイカにルーツのあるドニエレ・ブラウンさん(18)は遠い米国で証言してくれたことに感謝の言葉を述べ、真剣な表情で言った。「きのこ雲の下で何が起きたか、考えたこともなかった。核兵器をなくすというアピールは心に染みた。箕牧さんの物語をたくさんの人に知ってもらう活動をしたい」 ▽「私たちには時間がない」被爆者の意見表明、共鳴する若い世代 締約国会議の期間中、国連内では非政府組織(NGO)などが企画するサイドイベントも多く開かれた。 生後9カ月の時に広島で被爆した名古屋市の金本弘さん(79)は、核廃絶への道筋が会議で明確に示されない現状にもどかしさを感じていた。米国の核実験で被害を受けたマーシャル諸島など、世界各地の核被害者が団結を確認した時のこと。金本さんは傍聴席で立ち上がり、語気を強めて意見表明した。「私たち被爆者には時間がないんです」 12歳上の姉千代子さんは被爆で左半身にケロイドが残り、就職で差別を受けた。「娘時代をまどうてほしい(償ってほしい)」と言い残し、2019年に86歳で亡くなった。金本さんは「この悔しさを伝えたい」との決意を胸に渡米した。
2021年の条約発効により、「絶対に核兵器は禁止される」と金本さんの確信は揺るがない。とはいえ、被爆者が生きているうちに達成できるのだろうか。こう質問すると、「うーん」と首をひねり、複雑な心境を明かした。「核廃絶を議論すること自体が、目的化していると感じる」 それでも光は見える。日本のNGOの若者が運営するオンライン配信に出演し、率直な思いを吐露した。「若い人、世界の人が(核廃絶に)関わろうとしていて、とても一生懸命だ。私ももう少し長く生きたい」 広島市の佐久間邦彦さん(79)は生後9カ月で原爆に遭い「黒い雨」を浴びた。北東アジアの軍縮を考える29日のイベントで「被爆者の願いは救済だけではなく、核兵器が地球上からなくなることだ」と話し、核兵器の非人道性を原点に成立した条約の意義を強調した。 福岡大4年の岡明日佳さん(22)は、インターンで活動する米国の平和団体のメンバーとしてイベントに参加し、佐久間さんに謝意を伝えた。「話してくださるからこそ、私たち若い世代が核兵器に関して知ることができ、世界中で議論して考えることができます」。佐久間さんはこの言葉に「うれしかったね」と笑顔。2人は交流を続けていくと誓い合った。